遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

古面35.癋見(べしみ)4・・永享庚戌(室町時代、1430年)銘

2022年06月21日 | 古面

今回も癋見(べしみ)です。時代は古いです。

幅16.6㎝ x 長23.2㎝ x 高8.2㎝。重 207g。室町時代。

木彫の上に胡粉を塗り、朱に彩色されています。さらに、所々に黒で毛描きがなされています。木が枯れていて、大きさの割には軽いです。

眼光鋭いですが、

怒りよりは、威厳をたたえた表情です。

 

左目の端に孔があけられていますが、理由は不明です。

眉、口髭、顎髭が墨で描かれています。目も、黒で縁どられています。

非常に大きな鼻先が、スパッと削られています。

 

今回の古面は、私の持っている面の中で、資料的には一番貴重な物だと思います。

それはひとえに、面の裏の墨書きのためです。

上州               永享
 秋葉山       庚戌 
               三月
 御寶前

大權現

         政次郎
          本人 

永享二(庚戌、1430)年三月、 上州(群馬県)の秋葉山大権現(秋葉神社)に、政次郎なる人物が奉納した面であることがわかります。

上州には、14もの秋葉神社があるので、どの社かははっきりしませんが、この品によって、室町時代の奉納面の一様式がわかります。

秋葉神社は、火伏信仰とともに、天狗が祀られていることで有名です。

ですから、今回の品は、癋見(べしみ)面のうちの天狗面と考えて良いでしょう。

鼻が削られているので、よく知られている天狗のように長い鼻なのか、これまで見てきた癋見(べしみ)と同じく、大きめではあるけれど長くはない鼻なのか、どちらなのかはわかりません。

しかし、状況証拠から、この面は、これまで紹介してきた癋見(べしみ)と同じタイプの面と考えられます。

1)秋葉信仰における天狗は、元々、鼻の短い烏天狗であったらしい。
2)能(室町時代に確立)では、天狗の役者が癋見(べしみ)を被る。
3)長い鼻の天狗が一般的になったのは、江戸時代に入ってから。

それにしても、見事なまでにスパッと削られた鼻です。

かつては、鼻削りの神事があったのでしょうか?

 

 

 

 

コメント (8)
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