遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

古面31.顰(しかみ)5(記年銘有り、室町?)

2022年06月07日 | 古面

今回は、一風変わった顰(しかみ)面です。

幅26.4㎝ x 長26.7㎝ x 高10.6㎝。重306g。室町時代?

大型で分厚い造りです。その割には軽い。木が枯れています。

稚拙とも思える、非常に素朴な面です。

つり上がった眼や、 

大きく開いた口。

牙も上下に2本ずつ生えています(よく見ないとわからないほど短い(^^;)

顰(しかみ)面の要素を備えています・・・・

が、何とも言えず、親しみのある表情で、怖さとは無縁です(^@^)

彫りが素朴なことも、独特の純朴な表情を醸し出す要因でしょう。

では、彫りの素朴さはどこから来ているかというと、全体に平面的な彫り方からだと思います。

特に、これ以上開けないほど大きな口に並んだ歯や、

耳、鼻は、

小学生が彫ったかと思われるほど単調です。眼も一段掘り下げてあるだけです。いずれも、細かく彫りあげて曲面にするのではなく、平面的なままです。

太い眉毛をよく見ると、

左右の溝の中に孔が3つずつ開いています。

この孔は、

裏へ抜けています。

どうやら、眉毛には毛が植えられていたようです。

 

この面の最大の特徴は、裏に墨書きがあることです。

故玩館には、100枚ほどの古面がありますが、墨書きの記年銘がある品は、わずか数点です。

古面のほとんどは、由来、目的などすべてが不明です。墨書きは、古面の素性を明らかにする際、手掛かりを与えてくれる貴重なものなのです。

「奉寄進」

「◯原清助」

「◯応?七年八月十六日」

肝心の年号が薄れてはっきりとは読み取れません。「◯応」が正しいならば、7年間以上続いた年号は、明応年間(1492-1500)しかなく、この面は、明応七年(1498)に、◯原清助によって、奉納された物ということになります。

このようなタイプの奉納面は古面の図録などにもしばしば見られ、一般に鬼神面とよばれています。能面として顰(しかみ)が成立する以前の初源的な面かも知れません。

コメント (4)
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