陶胎七宝の花瓶です。
最大径 19.7㎝、底径 5.7㎝、高 13.5㎝。 明治初期。
これまで紹介してきた陶胎七宝は、いずれも日本的な器で、主として茶の湯用と思われる物でした。それで、陶胎七宝は、明治期、輸出向けの華美な近代七宝に対して、国内向けに造られた七宝、それが陶胎七宝ではないかとの考えにいたりました。
反対側:
これまで紹介した陶胎七宝と類似の模様です。
窓が前後に二つあり、その中に蝶と花が描かれています。
左側面:
右側面:
ハート形の地模様に蝶、花があしらわれているのも、これまでの陶胎七宝と同じです。
注目されるのは口元です。
口縁部に、ぐるッと金属のリングが嵌めてあります。
どうやらこの陶胎七宝は、里帰り品のようです。
陶胎七宝は国内向けの製品だけではなかったのです。
窓絵はなかなかのものですが、表面の荒れがひどい。
あちこちに色釉の剥げがあります。
これを見ると、色釉の厚さは非常に薄いです。
その下には、やはり白い粉状の物がぬられています。
針でつつくと、ぼろぼろと剥がれます。
右上のハート部分を拡大して見ると・・・・・
白粉の下に、ピンク紫の色釉が見えます。これは、陶胎の上に塗って焼かれた色ガラスでしょう。ポツポツと穴があいています。陶器の素地の吸い込みですね。
陶器質の器の上に釉薬を厚く塗って焼いても、それだけで平滑な表面を得るのは困難です。そこで、白粉(砥粉?)を塗り、その上に色釉を薄く塗って、模様を描いたと推定されます。
底には、「錦光山造」とかすかに読める文字が書かれています。
京薩摩の中心、錦光山窯で焼かれた陶胎七宝です。それが海を渡って外国で愛玩され、再び日本に帰ってきたと思うと感慨深いものがあります。
毀れやすい陶胎七宝さん。肌は荒れながらも、よく戻ってきました(^.^)