今回も煎茶碗です。
メダカがたくさん描かれた煎茶碗です。
口径 6.7㎝、高台径 2.6㎝、高 4.2㎝。中国明末ー清初。
小さな煎茶碗で、メダカが数多く描かれています。胎土は、先回の松竹梅図煎茶碗より灰色がかっています。器体も少し厚めです。口縁には銀の覆輪が施されています。したがって、縁の状態が見えませんが、おそらく多くの釉剥がれがあると思います。使う際の口当たりを良くし、耐久性を増すために覆輪がなされたのでしょう。写真では、蛍手のような透明感のある器に見えますが、それほどではありません。
今回の品で一番の目玉は、胴に描かれた多くのメダカです。
五客の煎茶碗のどこをとっても、同じ図柄はありません。メダカの配置が絶妙なのです。メダカたちの向きに偏りがありません。しかし、まったくバラバラかというとそうでもない。自然にバラついているといった感じでしょうか。
実はこの品は、四十数年前、まだガラクタ集めを始めてまもない頃、近くの田舎骨董屋にすすめられて買った物です。当時は、木の物ばかりを求め、陶磁器は避けていました。なんせ、陶器と磁器の区別もつかなかったのですから。私としては、大枚をはたきました。しまった、高い買い物をしてしまったか😥・・・何年か経ち、ようやく陶磁器にも手が出始め、メダカ模様が気になって注意して物をみるようになりました。ところが、どこにでもありそうなこの模様がなかないのです。しばらくして、骨董市でメダカ模様の伊万里焼小碗を見つけました。器には、整列して泳ぐメダカが描かれていました。その後もボツボツと目にするようになりましたが、いずれもメダカたちが揃いすぎで面白味がない。その後、ある骨董雑誌に、少しバラけたメダカ紋の蕎麦猪口が載っていました(記事が見つかりません(^^;)。しかしそうはいっても、メダカたちは、同じ方向に泳いでいます。もっとバラけたメダカ紋は無いのか・・・・あきらめかけていた時、東京青山ハナエモリビルの地下骨董街にあった上品な女主人がやっている店に、私の品と似たメダカ配置の煎茶碗が置いてありました。覆輪は無し。伊万里焼の古染付写しです。しかし、手に取ろうとして思わず引きました・・・値段がハンパでない😵💫 この伊万里焼一個で、私の古染付5客が買えるのです。主人曰く、これは伊万里のなかでも稀品です・・・そうか、私のメダカ煎茶碗はこの品の本歌だったのか😊
右も左もわからない駆け出しの頃、騙されたかもしれないと思って買ったバラバラメダカの煎茶碗は、有りそうで無い品だったのですね。
下戸は煎茶で、ビギナーズラックに乾杯🎉🤗🎊
ありそうで無いですよね。
私は、持っていません(~_~;)
このような伊万里があったら、是非、欲しいです(^-^*)
これには銀の覆輪が施されているのですか。
5個のうちの1個だけに覆輪が施されているのなら、その1個だけに、使う際の口当たりを良くするために覆輪を施したと考えられますが、全てに覆輪が施されているということは、最初から、5個全部に覆輪が施されることが予定されていたのではないかと思いました。
それで、ちょっと思い付いたのですが、或いは、これは、伏せ焼されたものなのではないかと思ったわけです。
私は、中国物に詳しくはないのですが、中国では伏せ焼という技法が使われることがありますよね。
そして、伏せ焼された物には覆輪が施されますよね。
そうであれば、これには虫喰いはなく、伏せ焼にした時の口縁に付着したザラザラとした状態を覆い隠し、使う際の口当たりを良くするために覆輪を施したものなのではないかと考えられますね。
中国では、伏せ焼は、かなり古くから行われているようですから、明末よりも前に焼かれた可能性が出てきますよね。
図録や解説本のどこにも載っていないし、不安と後悔の日々でした(^^; それが、だんだん明るい方に(^.^)
骨董屋の親爺は伏せ焼きだと言っていました。でも、伏せ焼は定窯白磁のような名品に用いられたもので(定窯でも伏せ焼でないB級品はいくらでもあります)、今回の品のような一般品をわざわざ伏せ焼で焼く必然性はないと思います。それに、伏せ焼の場合、高台は総釉です。今回の品は、ごく普通の高台で、畳付は無釉です。ものの本には、伏せ焼によってへたりを防ぐことができたと書いてありますが、私はむしろ、玉器にあこがれ、畳付も施釉し、裏面をできる限りきれいに仕上げようとして、伏せ焼が考え出されたのではないかと思っています。
女主人の言うことは間違いないように思いますが
やはり故玩館の収蔵品には本歌としてのオーラが感じられます。
このメダカのバランスの良い散らし方は他に類を見ない魅力がありますよね
陶磁器初心者の頃にこのような品を入手されたのは、遅生さんのセンスの良さだとしか言いようがありません。
ま、なまじすれておらず、無垢な赤ん坊だったからこそ、太陽の女神が微笑んだ!?(^.^)