良い子の歴史博物館

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三権分立

2009年06月23日 | 七権分立論
学校の社会科授業で三権分立の原理を教わる。

権力を一箇所に集中すると恣意的な権力乱用に繋がるので、
互いをけん制できる3つの機関に分割するというアイディアだ。
ジョン・ロックやモンテスキューなどによって唱えられたアイディアで、
司法、立法、行政の3つを頂点とする三角形の図式で示される。

一方、江戸時代以前の日本史には、こんなアイディアは生まれない。
江戸時代には、支配とは裁判を行うことが主な仕事と考えられたふしがある。
明治になって、司法権を裁判所が受け持つようになった当初、
各県の行政担当者は、大いに不満だったらしい。
裁判しないで、どうやって人民を指導できるのか? と。

町奉行所も代官所も、徴税と裁判と警察業務を全部兼ねていた。
江戸町奉行所の資料を見ると、裁判案件の長期化が課題になっていたらしい。
時代劇のようにスパッと判決がでたわけではないらしい。
民事訴訟は当事者間で解決しろという「相対済し令」が出るぐらいだから、
訴訟案件が多すぎて、処理できず、長期化を招いていたわけだ。

権力の分散アイディアそのものは、アジア諸国でも生まれていた。
王朝時代の中国では、地方へ派遣する官吏を民政と軍事と監察の3つに分けることがあった。
江戸幕府の職制では交代制が多い。
老中とか町奉行は定員が複数で、月番で通常業務をこなす。
これらは、権力の分割というより、官僚の暴走を防ぐためのものだろう。

近代になって西洋から三権分立の原理を学んで、これは良いと考えられ、
ほとんどの国で、導入される。
(少なくとも形式上は)

ところで、本当に三権分立って、最善の権力構造なのだろうか?

行政の肥大化ということが、よく言われる。
行政部門の担当する業務が圧倒的に拡大しているわけだ。
行政組織内部も、結構、首相や知事の命令なしで動く独立部門が存在したりする。
仮に行政の長が不在でも、組織は動いたりする。

それに権力作用として立法/司法/行政を完全に区別できるのかどうかも疑問に感じる。

では、どんな権力構造がありえるか?
ノルトはときどき思案することがある。
解答は出ていないが・・。