良い子の歴史博物館

訪れたことのある博物館、歴史上の人物、交通機関についての感想、小論など。

ロバ

2005年03月02日 | 交通機関
家畜としてのロバは日本ではなじみが薄い。
動物園では、野生の野ロバが中心だ。

ホームページを検索したら、
奈良のロバ君清瀬ろば倶楽部ロバの部屋 などがヒットした。
日本は極端にロバの少ない国なのだろう。

だが、中東、ヨーロッパ、中国に至るまでの広い地域で、
歴史を通じて、陸上輸送の多くを担ってきたのが、ロバ君である。

性質はいたって、おとなしく、女子供でも扱える。
小さい学童が数頭のロバを連れて行くことだってできる。
わずかの干し草、少量の水で、耐えることができる。
体重の割には重い荷物を運ぶ。
悪路を歩くことができるので、山岳地帯で重宝された。

面白いのは野生のロバは決して人間になつかない。
野ロバを飼いならすことは不可能と考えられる。

ロバは馬鹿という、とんでもない誤解がある。
知能的には馬より賢いと考えられている。
一度通った道順を忘れない。
荷車に乗った乗り手は居眠りをしても、ロバが目的地に運んでくれる。
小学校に通う児童は荷車の中で宿題をしている間に、ロバが学校まで引っ張ってくれた。
これほど安全な乗り物があるだろうか?

ロバは頑固という誤解もある。
気に入らないことがあると、全く動かなくなるからだ。
背中の荷物がずれているとか、歩くのに何らかの問題があると、動こうとしなくなる。
頑固といえば頑固である。
しかし、ちゃんと理由があっての頑固さなのだ。
理由を理解して、問題を除いてやると、再び従順になる。
安全装置の感度が極めて鋭敏なので、それだけ安全性が高いのではないか?

古くから、飼育されており、聖書には頻繁に登場する。
馬は軍事用だが、ロバは平和の象徴とされていた。
イスラエルの王は即位時にロバに乗るとされる。
ソロモンもロバに乗った。
これに倣い、キリストもロバに乗ってエルサレムに入城したことで有名である。
中東地域では、どんな貧乏な家庭でも、ロバだけは所有できたと思われる。

実際には、古代ペルシャのように、軍事物資輸送用として、ロバ部隊が存在することがあった。
中国では近年まで重要な役割を果たし(今でも地方では重要だ)、
毛沢東に率いられた長征もロバがいたから成功したのだ。
しかし、のんびりした歩き方、温和な性格は平和そのものと言えるだろう。

大型の馬に比べると、積載量は高くないし、スピードも遅い。
食用や毛皮としての利用は、あまり聞かない。
乳は栄養があると言われ、ロバの乳を入れて入浴すると美容に良いとされるが、
実際に利用することは、あまりなかった。
運搬用としてのみの価値で飼われたのだろう。
しかし、経済的で、頑丈で、安全で、しかも可愛い。

近所の入場料無料の小さな動物園にロバが2頭ほどいる。
柵越しに背中をなでろと言わんばかりに近寄ってくる。
耳が長くて、つぶらな瞳で、本当に可愛い。
家畜のロバは人間が大好きだ。

残念ながら、日本では定着しなかった。
本当に残念だ。