朝露に膝下までをひたしつつ深くなりたる草を刈りゆく
雲ふかき山の家にも人の住むまばらまばらに住むさびしさに
たっぷりと踏み込んでゆく山みちに渓流にきみのむかしの歩みは
廃校の旗立てに金具こんかんと風のリズムを鳴らす泣いてまう
晴れてさえいればなんでもないことに泣きたくなって雨中の紅葉
いつからが春でありしか羊歯となりそよげる蕨を谷に数えぬ
山帽子ことしの花のおおぶりなひらきに夜の一角白む
あさなさな尿瓶あらえる草むらにミントそだちて香りをはなつ
杖に立ち朝(あした)の窓にブラインドあげてあなたがあらわす山並み
人の世は苦痛にまみれつゆ草は雨にひらきて青いろ洗う
(なみの亜子 「ロフ」と言うとき 砂子屋書房)
雲ふかき山の家にも人の住むまばらまばらに住むさびしさに
たっぷりと踏み込んでゆく山みちに渓流にきみのむかしの歩みは
廃校の旗立てに金具こんかんと風のリズムを鳴らす泣いてまう
晴れてさえいればなんでもないことに泣きたくなって雨中の紅葉
いつからが春でありしか羊歯となりそよげる蕨を谷に数えぬ
山帽子ことしの花のおおぶりなひらきに夜の一角白む
あさなさな尿瓶あらえる草むらにミントそだちて香りをはなつ
杖に立ち朝(あした)の窓にブラインドあげてあなたがあらわす山並み
人の世は苦痛にまみれつゆ草は雨にひらきて青いろ洗う
(なみの亜子 「ロフ」と言うとき 砂子屋書房)