気まぐれ徒然かすみ草ex

京都に生きて短歌と遊ぶ  近藤かすみの短歌日記
あけぼのの鮭缶ひとつある家に帰らむ鮭の顔ひだり向く 

無人駅 山本枝里子 ながらみ書房

2021-05-31 12:03:14 | 歌集
あやとりの母のゆびさきよく動きうごきすぎては絡まるばかり

たかだかと向日葵咲けりその影のしたに揺れゐる一叢の藍

一尾だけ反対むいてゆく魚ああ晴れやかに泳ぎゐるなり

ガラス窓ながれて落ちてゆく雨のおなじみちすぢ通るおほつぶ

くちばしの赤おもさうに引き上げる春の浅瀬のツクシ鴨五羽

冷蔵庫にメモ帳しまひ次の日にひえびえとした一首取り出す

あふたびにあなたがとほくなるやうでこはい首すぢ隠すスカーフ

かへる胸なければひとりきて立たむ無人駅こそわれにふさはし

白くきれいな指だつだひとその指に描かれ花となりゆきし絵具

空つぽとなつた心に向日葵の花を詰めたしひまはりの黄を

(山本枝里子 無人駅 ながらみ書房)

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心の花所属の山本枝里子の第三歌集。連作で小さなストーリーを作るタイプの人と思う。絵を描く人との結ばれなかった恋をテーマに執念く詠まれた「つづれざる一行詩」が印象的だった。旧かな遣いで、ひらがなが多いために読む人の時間を留まらせる。向日葵、藍に地元徳島への愛を強く感じる。真面目で、常識的な考えに合わせようと努力して苦しんでられるのではないだろうか。他人というのは無責任に言いたいことを言う。気にしなくても大丈夫。そのままで充分ステキだ。

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