Recipientとして生きる

肝移植をうけて15年が過ぎました。
ボーイスカウト札幌第9団団委員長として活動を続けています。
健診の日々です。

生体肝移植―5年の歩み―(1)

2013-04-09 12:23:14 | 生体肝移植
 平成20年4月15日、北大第一外科(現在、消化器外科学分野1)の移植グループにより生体肝移植を受けました。B型肝炎から肝硬変となり、多発性の肝臓癌を併発していて、移植以外助かる道はありませんでした。幸い長男がドナーとなってくれたので、右半分の肝臓をもらうことができました。自分が同じ第一外科の出身で、博士論文も肝移植でのドナー肝の保存がテーマだったのが何とも皮肉でした。
 幸い肝臓癌の再発や、免疫抑制による他臓器の癌も見当たらないようで、まあまあの肝機能で生き延びることができました。外科でよく言う癌の手術後の「5年生存」に入ったわけです。ありがたいことです。移植を受けていなければ、2年以内に死亡していたのは確実で、おかげで娘たちの結婚式や孫たちの誕生も見ることができました。
 手術後は必ずしも順調とは言えませんでした。4月に手術を受けた後、7月の肝機能はまさに20代のもので、肝機能検査としてはすべて正常のすごいものでした。しかし、その後徐々に肝機能が悪化し、ときどき寒気とふるえを伴った高熱が出るようになりました。拒絶反応を疑ったのですが検査では異常がない。翌年の1月に胆汁の通り道の胆管が狭くなっているのがわかりました。
 胆汁は、赤血球に含まれるヘモグロビンが壊されたあと、その色素が黄色いビリルビンに変化したものに、酸やコレステロールなどが混ざって液体として肝臓で生成されます。作られた胆汁は細かい支流からだんだん本流に集まって行き、一本の胆管として十二指腸とつながり、消化管に排出されます。脂肪分の消化吸収に重要な役割をしており、便の色は胆汁によるものがほとんどです。この大事な胆汁の流れが悪くなり、肝移植のアキレス腱といわれる合併症を引き起こします。
 胆管がせまくなる胆管狭窄は、生体肝移植の20~30%に起こるとされるやっかいな合併症で、どこの移植施設でも治療に難渋しています。原因は、胆管を養う血管の血流が、肝臓を半分切って胆管も切り離して植えるために減ってしまうことによります。つまり、胆管は肝臓から38%、十二指腸側の動脈から60%血液をもらっていますが、肝動脈自体からは2%ほどしか血液をもらっていません。肝臓を半分にして胆管を切り離すことにより、肝動脈をつないでも血流がかなり落ちてしまいます。血液の乏しい胆管はだんだん縮んでいきます。そのため胆管が狭くなり、胆汁の流れが悪くなってバイ菌が溜まりやすくなって、熱が出たり、肝機能が落ちたりするわけです。
 私の場合は、移植した肝臓の胆管と小腸をつないでいるのですが、その根元の胆管が直径2cmの半円の範囲で狭くなっていました。つまり、おおよそ4本の川が合流して1本になっているのですが、その4本とも根元で狭くなり、さらに合流した1本も狭くなってひも状に腸につながっているわけです。
 その狭くなった胆管を広げないと、結局肝臓そのものがだめになってしまいますので、まず、外から胆管の中に管を通して、それを通じて胆管を広げようと計画しました。平成21年2月、術後10カ月目で右脇腹から肝臓にチューブ(PTBD、経皮経肝胆道ドレナ―ジ)を入れました。多少胆汁が腹のなかに漏れるため、とても痛い胆汁性腹膜炎というのを起こしました。また、チューブが折れたりぶつかったりのトラブルもあり、移植手術の直後より痛くてつらい数週間を過ごしました。寝返りも、咳も、体を起こすことさえできず、眠られないためのストレスも加わって心房細動(心臓の不整脈)まで起こしましたが、耐えました。しかし、その後の、今も続く長い合併症との戦いの、まだ序の口だったのです。(つづく)

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1 コメント

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はじめまして、初コメントです! (めぐみ)
2013-04-10 18:34:33
はじめまして!めぐみっていいます、他人のブログにいきなりコメントするの始めてで緊張していまっす(*゜▽゜)ノ。ちょくちょく見にきてるのでまたコメントしにきますね(*゜ー゜*)ポッ
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