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2017-12-03 | 山と渓谷社、関連本



羽根田治
『ドキュメント 気象遭難』★★★+


前回のシリーズ続2
気になってしまって・・(山が呼んでいる)
                     かっこう


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*谷川岳

雪崩発生

雪崩に流されながらも、気持ちは不思議と落ち着いていたという。

「ほかの山ならともかく、谷川についていえば、雪崩注意報というのはあまり意味のないことです。そもそもが雪崩の巣みたいなところですし、常に雪崩注意報が出ていてもおかしくないですからね。要は、クライマーが直感的に雪崩が起こるかどうかを判断するしかないわけです」



*伊那前岳

突風

<稜線は強風で、「吹き倒される」ことはあっても、決してホコリのように空中に「吹飛ばされ」て死ぬことはない>
が、この事故に関して言えば、遭難者は強風に吹飛ばされて亡くなったとしか考えられない。断定はできないが、事故当時の状況からして、おそらくその可能性が最も高い。

「春一番」「春の嵐」

下界でさえそんな状況だったのだ。まして標高3000メートル近い山の稜線上がどんなだったか――。

「あのときは、風がやんだのかなと思った瞬間に、ドーンときた。それまではいろんな方向から絶えず風が吹きつけていたんですけど、突然、千畳敷のほうから爆風のような風がドーンと来たんですよね」

「状況を聞いて、『ああ、あの絶壁だな。だったらもうダメだ』ということはすぐにわかりました。」

そもそも中央アルプスでは、3月半ばから4月にかけて猛烈な風が吹くことが多いのだそうだ。そのなかでも2911メートルピークから伊那前岳にかけての稜線上は、とくに風の強いところだと言われている。

「たとえば同じ場所、同じ時期でも、山の状況は気象条件で全然違ってきちゃう。だから山で自分の安全を確保するためには、まず気象の変化による山の状況の変化に自分の技術で対応できるかが大事になってきます。昔の登山者がいちばん恐れたのは気象ですよ。今の登山者は、気象の変化に対する危機感を全然持っていない。気象の変化から自分の身を自分で守るための危機管理の意識が、間違いなく薄れてきています。」



*塩見岳

落雷

立木などに落ちた雷の電流が、その周りにいる人に再放電して流入する現象を「側撃」という。側撃が起こるのは、木より人体のほうが電流が流れやすいからだ。このときも、木から周囲にいた数人に側撃が起こり、大小の傷害を与えた。

「雷が体内の入ると、組織の損傷と神経の損傷が起こる。組織の損傷はすぐ反応が現れるが、神経の損傷は一週間ぐらい経ってから出ることもある。なにか異常を感じたら、すぐ病院へ行って手当てを受けるように」

「体内の電流が流れると、体の内部が損傷します。それを再生しようとする際に腎臓に負担がかかって腎不全に陥ります。そのほか白内障になる可能性もあり、神経障害もあとに残ります。とりあえずは腎臓の治療をすることにしましょう」

山での雷の恐ろしさは、理屈としては誰もが承知しているが、「まさ自分たちには落ちないだろう」と思っている登山者は多いのも事実だ。




*トムラウシ山(大雪山 旭岳~白雲岳~平ヶ岳、五色岳、化雲岳を経て)

低体温症

台風

「あなたたちが今こうして生きているのが不思議なくらいだ」

悪天候のなかを行動したことについては、結果論で言えば「行動すべきではなかった」と言える。

北海道の山の気象は本州の山の常識では推し計れるものではない。それを本州の登山者は知らない。本州の山も北海道の山も同じだろうと思っている。そして痛い目に遭う。実際、この年の遭難者のほとんどは北海道以外からの登山者であった。

大雪山の山々の標高は2000メートル前後である。だが、たとえ標高が同じぐらいであっても、大雪山と奥秩父では自然のありようはまったく異なる。




*立山

凍死

中高年登山ブーム
日本の大衆登山史上および山岳遭難史上に残る、極めてシンボリックな事故であった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%8B%E5%B1%B1%E4%B8%AD%E9%AB%98%E5%B9%B4%E5%A4%A7%E9%87%8F%E9%81%AD%E9%9B%A3%E4%BA%8B%E6%95%85

天気の急変

「明日はすごく天気が荒れるようだから、行動は控えたほうがいい」
それが翌朝はまさかの快晴であった。

「きっかりと時間を計ったように、9時になったとたん天気が荒れだしたんです。ふつうだったら徐々に悪くなるんですけど、あのときは快晴の天気からいきなり悪くなりました。私も山に入って20年近くなりますが、あれほど急激に変わったというのはあのときだけで、ほかには記憶にありません」

山での厳しい状況下では、装備の差が最終的に生死を分けることがある。だが、そういう状況に追い込まれる以前に引き返していれば、なにも問題は起こらない。
いちばん重要なのは、天気がどんどん悪化するなかで、しかも装備が不充分な状況下では、いかに早く、“引き返す”決断ができるかどうか、なのだと思う。




*剱岳

異常降雪

冬型の気圧配置といえば、西高東低が有名だ。

日本海側、北アルプスの北部に位置する剱岳は、国内でも有数の豪雪の山として知られている。実際、冬の剱を知る者は、その厳しさはハンパではない、と口をそろえる。

こうした厳しい自然条件を踏まえ、富山県は冬の剱岳における遭難事故防止のため登山条例を制定し、12月1にちから翌5月15日までの間に剱岳一帯の「危険地区」に登山する者に対して登山届の提出を義務づけている。もし登山届の内容が不適切な場合には「勧告」がなされる。要するに、「あなたたちの実力では冬の剱岳に登るのは無理です。おやめなさい」と言われるわけである。
冬の剱岳では、ひとたび天候が崩れたら十日や二週間吹雪かれるのは当然のこととされ、登山者もそれを想定して計画を立て、また準備を整える。「冬の剱に登ろうとする登山者は、体力も技術も国内トップクラス」という認識は、今も昔も山男たちの間に広く浸透している。逆に言えば、選ばれし登山者のみに許された世界が冬の剱岳なのだ。

「ヘリで助けられるというのは、山ヤにとっては屈辱的なこと。ヘリがない時代だったら、みんな死んでいた。しかも、こういう難ルートに死ぬ気で行っているわけだから、世間様に言わせれば『この期におよんで命請いをするんじゃない。人為的な手段に頼るくらいだったら、死ね』ということになる。だから救助要請を出すに当たっては、侃々諤々であった。」

日本のトップレベルの登山者の目さえ欺く冬の剱岳。いや、自然が人間を欺くのではない。人間の勝手な思い込みが自然に欺かれるのだ。


*剱岳

暴風雪

晩秋から早春にかけて、日本海側と太平洋側にある二つの低気圧が日本列島を挟むようにして北東に進み、北海道付近や三陸沖でひとつにまとまって台風並みに発達した低気圧になるものを二つ玉低気圧という。この二つの低気圧が通過するときには、日本列島は全国的に大荒れの天候となる。とくに山岳地では猛烈な暴風雪が吹き荒れ、通過直後から強い季節風が吹いて気温も一気に下降する。
二つ玉低気圧は、山や海ではしばしば遭難事故の原因ともなることから、登山者や漁師にはひどく恐れられている。例えて言うなら、気象的な災いのすべてももたらす悪魔のような低気圧といったところだろうか。

二つ玉低気圧が厄介なのは、その通過中、場所によっては一時的に天気が回復したように見えるということだ。
いうなれば、台風の目のようなものだと思えばいい。

「まるで地獄。目も開けられなかった」




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