建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

忙中閑あり・・

2024-02-05 08:36:03 | 建設現場 安全

九月二十一日(木) 晴れ  

今日から4階のサッシュ取り付けだ。
6階迄一気に取り付けられる状況になっている。

3階迄の造作工事も終わりに近い。
何となくヒマそうに感じられていたこの頃であったが、
M店舗からの解放感(一週間)で、こういうのをボケ症状とでも言うのでしょう。

 ゴルフでもしてスカーッと……という味を私は知らない分、性格が暗いのだろうか。
スナックへ行ってカラオケで気分転換もいいだろうなア……と遊ぶ事ばっかり考えている。

きっと私はネクラ《根っから暗い性格》なのだ―――本当は・・・)
と悩んでいると、N子が訊(きい)て来た。

「所長、お体どこかお悪いのですか?」
「うん、実はね―――」
と言っても全く信用してくれない。
所長は絶対ネアカ、九十九%以上ネアカと言う。

今、本人はネクラだと……相当落ち込んでいる時なのにね。
スランプなんだよ、何かに落ち込んでいるのだ………。
美術館のインパクトもかなりボディに効いてはいる。
M店舗の精算業務も頭痛の一端を担っている。

 景気付けに昼食はF君、N子の三人で『しゃぶしゃぶのK』へ行った。
 昼間からビールを飲んでいる隣の席を横目に見ながら、目一杯食った。
飲めない分バカに食った。

美味(うま)いモノを食わねば、上手(うま)い仕事は出来ねえ!』
と自分勝手にあみだした哲学を広める為にも、私は忠実に実行に移している。

どこかで《ゼニの成る木》を捜さねばならないけれど、一回《飲み屋》へ行ったと思えば安
いものだ。
麻雀もここ最近していないので、小遣いはピンチというより、負けた時の出費代から換算すると、
食事代くらい何とかなる。(様な気がするだけ……かナ) 

 目一杯食ったからか、昼から益々ボーッと頭がお休みだ。
もうすぐ今月度の『工事報告書』を作らねばという時期になっている。

今月は何やってたんだ・・・?)
とボーッと現場を眺めていると、M店舗の狂い咲き騒動が浮んで来た。
動き廻っている方が私の性分(なに分ネズミ歳だし)に合っているんだろうネ。

「所長が戻って来て現場がまた明るくなったね」
とH設備の牧田さんが言ってくれた。

 職人達に対して常に頭を低く低くして対処している牧田さんは、私が後ろにいるだけで、
気が楽になったのだろう。
「今度食事にでも行きましょうヨ」
とこの満腹の時に限って、誘ってくれた。

「そんな事11時頃に言ってくれたら、今日一緒に行ったのに―――(ゲップ)」
「それを見越して言ったつもりですヨ」
「バーカ、ハッハッハ・・・」

しかし今の一言、私もN子もしっかり聞いたぞ。
しっかり胸(この場合胃袋)にキザミ込んだのだ。

そうだ、来週はN子の誕生日(二十ン歳)だからパアーッと行こうよ夜、夜にだよ。

「夜はパパと・・・」 
「何、また仲良しするの三人目!?」と冗談。

松田聖子のそっくりさんベスト3に入ったN子は、二児のママだった。(モッタイナイ)
じゃあお昼にステーキでも……となって、予約担当N子、金銭担当牧田さん、仲間手配担当
F君、ついて行って食べるだけの私。
これが『昼食会』の段取りだった。

 そして、設備業者と建築業者のコミュニケーション会、忘年会の下準備会へと来月から世話
役を決めよう、と話は遊ぶ方へどんどん膨らんで行った。

一体何が原因で食べる話が大きくなったのだ?これも現場が楽しく仕事をしている余裕から
来るのだろう。
大いに遊んで大いに食って、楽しんでから、仕事に頑張ろう。

美味(うま)いモノを食わねば、上手(うま)い仕事は出来ねえ!』私の言葉にウソは無い。

 

  九月二十五日(月) 晴れ  

チャレンジ21」の看板の横にオーナーから依頼されたテナント募集の看板が掲げてある。
 これも私の独断で全くのオリジナルだし『N子看板店の力』によるものだった。
この足代に掲げたシート看板の件で、テナントの問い合わせが、かなり来る様になった。

 パンフレットを渡して一応どういう会社かを私も訊(たず)ねてはみる。
 横文字の名前、カタカナの会社名が多いのも、今の時代の特徴なのかも知れない。
  各階とも現在はオープンスペース(外壁のみの状態)だから感覚がつかめない様だ。

「広いね」と言う人と「狭いね」と言う人の会社の感覚、人数、レイアウトにもよるだろう
けれど、各社様々だった。

 我々の作業によって建物が出来たとしても、テナントがさっぱりだとオーナーも資金繰りに
悩むケースが出て来るので、何とかして全フロアーの早期入居者契約決定を望んでいる。
入居者は個人相手でなくて会社(企業進出)の話だから私には心当たりはほとんど無い。
売り込む方針よりも、私には看板でお客が飛び込んで来る迄待つしかない。

しかし世間にアピールするにはこの看板効果はテキメンだった。
掲げたのが土曜日で、月曜日にはもう第一報の希望者が現れた。

「パンフレットを頂きに参りたいのですが………」
とかなりの件数があった。

ただ単に下調べ中の会社もあるし、不動産業者の方はまとめてテナント募集業務を行いたい
とか申し出て来られた。
問い合わせ先を看板に記入しなかったのだが、現場事務所の電話番号迄調べて私への話だから、
かなり入居希望が強いと見てよかろう。

「お宅の支店でここの電話番号聞きました」
と言う会社もあった。看板効果絶大也。

もう一つの看板『チャレンジ21』の件。
今日迄で3週間だけれど、仲間内からや協力業者の方々からの声は面白かった。

   《言われた言葉》            《言えなかった言葉》
    「何て書いてあるの?」        (これにはガッカリした、読めないのでは………
 「カッコいいね、どの位した?」     (安かったダメって言うのか、十五万で売るヨ)
 「誰が考えたの?いいねえ」    (当たり前だ、俺以外でどこに遊び人がいる? )    

    「私の所でも掲げたいので・・」  (どうぞご遠慮なく、真似して結構ですヨ。  )
 「看板屋さん紹介して下さい」   (私とN子アマチア塗装店なんだけれど、いい?)
 「現場の看板計画の参考に・・」  (参考だけで終わるなよ、作れよ何か考えてサ。)

 「全景写真送って下さい」     (自分で撮れよ、外から丸見えだから看板なのに)
 「外す頃、私の所が掲げる頃で」  (クレってはっきり言え、タダでか?十万か? )
 「恥ずかしいから降ろしたら」   (キツイ冗談だぜ全く―――こう言う人は大嫌い

 「勝手に看板掲げるな」      (俺の現場だ、簡単には降ろさないぜ。    )    
    「看板掲示理由を上申したか?」  (理由を言って迄自作掲揚する気持ちは全くない)
 「どういう趣旨で作ったのか?」  (誰もしていなくて、目立ちたかっただけのモノ)

 「今度現場見学させて下さい」   (現場かね、看板かね、製作方法かね?    )
 「車で通る度に話題だよ」     (ヒマだから作ってたなんて言うと頭殴るからね)
 「所長はどんなセンスの持ち主?」 (期待に反してズボラだったりするものだヨ。 )
 「今度から決まった看板なの?」  (決まってパテント料入るといいねえ。    )
        ・・・                ・・・・

        ・・・                ・・・・

        ・・・                ・・・・
建設業界のイメージアップ作戦も重要視されて来ているものの、市街地でも何の楽しみもない
仮囲いに殺風景な塗装が多いものだ。
以前にも言ったけれど『建築のセンスをアピールする』力が、土建屋の方々は上手くない。

 今の若者は会社の作業服に対してでも、センスの良し悪しを語り、個人の作業服で仕事をし
たい人も多いみたいだ。
「これが会社からの貸与の服だ」
(何十年前の仕事服スタイルだ……どうしてもコレでないといけないの?)だ。
会社の名前もカタカナにしたらイメージアップにはなるしナウイ感じだと考える。

いまだに社名に『組』が付いてる。
せいぜい『建設』にして、さらに○○コンストラクションに一気に変換すると 
「流石(さすが)だ、若い社長に就(つ)いて行ける、若い力で!!」な・ん・て・ね。

 が、今の社名の基で頑張った『エライ様』に嘴(くちばし)の黄色い若造が、何を言ってもダメ
なのでしょうかね。

 何とかして第三者に、安全第一以外に訴えるものを考えていたにもかかわらず、私もせい
ぜいこの看板程度で終わってしまった。
しかし、たかが一枚の看板を巡って、色々と意見、世間もかいまみえて、この業界のセンスの
低さを痛感したものだ。

 もっとインパクトのあるモノにしたかったのだけれども、取り敢えず
一石を投じたら波紋はどうなるか』
を覗(のぞ)いて見たかった気持ちも多分にあった。

 足代の全面シート、ただ隠しているだけのシート貼りだけれど『大きなキャンパス』と見立
てれば、これほど面白いものはない。
何だって描けるではないか。

私の『究極の夢』はそこにある。
実現は不可能だろう(可能に出来ない事はない)けれど発想一番者として、ふざけたアイデア・・・。


 ―――その夢として――――
   大きな現場の仮囲いを『大きなキャンパス』としての話。
   「マリリンモンロー」のスタイルを描く。
   ポイントは出入口で、その仮囲いシートを上にめくっておけるシステムにする。

           現場が稼働している時は、シートを上にめくり地下鉄から吹き上げて来る風によって、
   モンローの例のシーンが、それとなく現れる。
           その下を出入りするたびに、男衆の頭上確認になるだろうし、色気位あってもいいだろう。
          作業終了とか、休日でシートを降ろしておくと、普段のモンローそのままになる。

           現場は完全にシートで覆っても何故かめくってある所があって、遠くから眺めていても恥
   ずかしい程、中途半端でダラーンとなっている時が多い。ならば、
   「いっその事、めくってしまえ!」
    一喝するとコソコソと直している時もある位だから………。

この(モンロー仮囲い)は、映画館を創る時には、使ってみたい手だ。
スポンサーがなんと言うかが分かれ目だが、誰か私の代わりに・・・。

 

コメント
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