3009S3用キャリングアームCA1の端子が不調で、ケーブル交換を含めてメンテナンスを依頼しようかと思い、ネットを検索したところ非常に手ごろな金額で状態の良い中古の3009S3本体が見つかった。
フルイドダンパーまわりのパーツはやはり一部欠品(完全に揃っている中古を見たことが無い)だが、オイルに浸すパーツは2個ほど残っていたので、適合するネジだけ買えばオイルダンプの効果を試せそう。
また、現在使用中の3009S3はV15VxMRつきで本体のみ購入したもので、フルイドダンパー周りのパーツはすべて欠品、3009S3Sの箱に入れてもらって持ち帰ってきたこともあり、純正箱とCA1&FD200を買うつもりで購入を決めた。
届いた箱を見ると、おお、かっこいいな(笑)。見慣れない治具はラテラルバランスセッティング用か。ウェイトは完品で、カートリッジとシェルの間につけるダンプ剤も使用した形跡は無い。
ただ、フルイドダンパーは使用していたようで、オイル溜めには使用の形跡があり、オイルに浸すパーツ1つと、そのパーツを止める純正の立派なネジが無い。ネジ(M2)は代用で何とかできるのだがそんな大事なものをどうして無くしたりするんだろう。(ここの純正ネジはそう簡単に手に入らないのですよ。M3なら代用化粧ネジがあるのだがM2はそうそう見つからない)
気を取り直して、まずはと、エアダスターと軽く水を含ませたメラミンスポンジ(激おち君)を使って本体を丁寧に慎重に清掃し(前のオーナーが喫煙しながら音楽を楽しんでいた事が良くわかる)、オイル溜めは濃いめの洗剤と綿棒で洗浄し、ぴかぴかの出来立て状態に戻った。
これまで使っていた3009S3と総取替し(もちろんグロメットは新品に交換)、まずはオイルを入れないで音を確認する。
フォノイコライザーはQUAD44で、カートリッジは今回初めて組み合わせる2mBLUE。音の立ち方、S/N感が素晴らしい。彫りの深さと切れの良さ、響きの美しさはアームとの相性も良いのだろう。カーゾンのピアノが美しい。家族も「きれいな音だね」。
ここでダンピングオイルを注入。純正品があんまりなので、AZ(エーゼット)の粘度100,000cStのシリコンオイルを使用した。このAZの商品は狭いところに注入しやすいようなパッケージなので実に使いやすい。FD200のマニュアルによると純正ダンピングオイルの粘度は200,000cStとのこと。今売られているFD2013も同じなのかな。
ちなみに純正リフターオイル(3423)の粘度はどの位なんだろうと調べてみたがわからなかった。値段があまりに違うので中身が同じものとは思えないが....
注入後しばらく放置しておいてオイルが馴染んだのち、リフターを上げ水平方向(レコードの内周方向)に手で動かしてみる。
急に動かすと制動がかかり、ゆっくり動かすと制動がかからない。程よくダンピングが効いているようだ。
オーディオクラフトのワンポイントアームやパイオニアのPL-70Lのアームをいじった時の独特の感触を思い出した。
さらにカートリッジを常用のV15type5に戻し音を聴いてみると....
おおお、そうか、3009S3はフルイドダンパーを使ってこその高性能機だったのか。音ひとつひとつが美しく磨かれ、一聴するとおとなしくなったような感じがするが、今まで元気の良さや音の隈取として聴こえていたのが、実は音の際(きわ)の「余計な毛羽立ちによる刺激感」だったという事にすぐに気づく。
これを「音が死んだ」と見るか、「美しくなった」と見るかは人によってソースによって違うのだろうが私にとっては明かな「グレードアップ」である。
キャンつき気味に聴こえた盤や荒れた音が出ていた盤が、随分と聴き易くなった。
レコードやカートリッジのそばでオイルを扱う事に抵抗があって、今までフルイドダンパーを使おうとは思っていなかったが反省することしきりである。
次はダンピングオイルの粘度による音の違いを確認してみよう。カートリッジのコンプライアンスによって最適なオイル粘度があるはず。AZのオイルは簡単に手に入るし、粘度もいろいろあって試しやすいのでさっそく発注しよう。