今までずっとQUAD44をいじり倒しながら考えた事のひとつが「現在の100V駆動で出ている音が本来のQUAD44の音なのだろうか」ということ。
回路図からすれば、QUAD44の設計は120V入力と240V入力の2つだけなのだが、ロットによって違いがあるのだろうかと、赤い電源ボックスユニットの外の表示(国内で出回っているもの)をネットで調べてみた。
その結果、以下の5バージョンがあることがわかった。(簡易的に調べたのでもしかするともっとあるかもしれない)
~外側に電源電圧の切替スイッチがついているバージョン~
<回転SW版バージョン1>
表示 180-200V
90-100V
<回転SW版バージョン2>
表示 200-240V
100-120V
<トグルSW版バージョン>
表示 200-240V
100-120V
~外側に電源電圧の切替スイッチの無いバージョン(内部に切替基板があるバージョン)~
<日本向け?>
表示 90-100V
<英国やヨーロッパなどほとんどの地域向け?>
表示 200-240V(私の44)
私の44に入っていた電源ボックスユニット。外には200-240Vと書いてあるが、写真にある内部切り替え基板で115Vに切り替えてあった。
しかし、先にも記したようにQUAD44は設計上120Vと240V入力しかなく、おそらくはトランスもロットによって定格の差はなさそう(変える意味がない)。ということはこの赤い電源ボックス、外見上電源の定格に多くの種類があるように見えるけれども、実は電気的な中身は一緒っぽい。
(入力のトランスのタップを変えるだけで対応しているだけかも)
それはそれで、オーディオビジネスと設計思想ががっちりタッグ!なので別に構わないのだが、ここで疑問がおこる。それではこの44の設計者は、どの電源電圧で音決めをしたのかということ。世界中どこでも売れるように動作電源幅を広くとっているものの、実は音決めは115V(アメリカ)や220-240V(イギリス)で行っていて、それでやっと設計者所望の音質が得られる設計なのではないだろうか?
バンドをやっている友人の「アメリカから輸入のアンプやエフェクター類は、電源が微妙に違うこちらでは性能を発揮しない。」という言葉も気にかかる。
そんなことをつらつら考えていたら、急に100V⇒115Vの昇圧トランスが欲しくなった。QUAD44のようにかわいいプリアンプにはバカでかい電源装置は似合わないので、よさげなものはないだろうか。
色々探して手頃な大きさのトランスを見つけた。オーディオ店よりも楽器屋での取り扱いが多かったのは、さすがと思った。演奏家たちは気が付いていたのだろう、115Vで最適設計された装置を100Vで使った時の微妙な音の差に。
で、買ったのはこんな感じのもの。(写真を撮り忘れたので販売店のサイトでご紹介)
http://www.soundhouse.co.jp/shop/ProductDetail.asp?Item=307^EHU600^^
さっそく繋いで聴いてみた。
これは良い。音楽性が豊かになるとはこういうことかという変わりぶり。実に活き活きと音楽を奏でる。クラシックでさえドライブ感が向上。同じレコードが早く聴き終ってしまうといって通じるだろうか。音が生っぽくなるのだ。ACラインのアイソレートの効果か、115V駆動の効果か、理由はどちらでも構わないがとにかく良くなったのは確か。
念のため、QUAD44内部の電源ラインの電圧を測定した。このトランスの有り無しで変わるはずもなく、きちんと±15Vが出力されていた。(そりゃそうだ、そういう回路だし、しっかりメンテナンスもしたし)電源基板がきちんと仕事をしていて電気的動作には全く問題ない事が確認できたので、このまま常用することとする。心配だったトランス本体のうなりも最小でリスニングには全く支障が無いのが幸い。
まあこれもQUAD44だからできたことなので、追試される方は自己責任で......