音楽とオーディオの備忘録

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QUAD44メンテナンス記録(2012.12.22,29追記)

2012-12-15 15:07:00 | オーディオ

QUAD44(後期型)のメンテナンスを行ったので備忘のため記録を残しておく。
写真のタイムスタンプはあてにはならないので念のため。

(前面写真)
Dsc_0589

(背面写真)
Dsc_0590

(内部:上から見る)

Dscn3050

(内部:下から見る)

Dscn3052

まずは点検。外観は超美品。中を見ると隙間の埃もない。大事に使われてきた感がある。電源基板のスルーホールとセレクタ基板に半田補正の跡があり、おそらくはQUAD44の持病とも言える、「勝手に入力ソースが切り替わる」などの故障を修理した(しようとした)のだろう。

内部を良く眺めるとそれ以外に半田ゴテをいれた形跡は無いが、何と電源ボックスが200-240V用。内部で切り替えできるし、すでに100Vに変更されているので問題は無いのだが、どういった経緯で日本に入ってきたのか不明ではある。しかもこのボックス、上部の長い方のねじが足りない。

以上、現状を整理すると
1.後期タイプの44で、環境の良いところで大事に使用されていた
2.問題なく音は出るが内部部品は当時のまま。電源部の改造、セレクタ異常の修理歴あり。
3.電源を入れた時だけリレーがばたつく

そこで、メンテナンスの方針として
1.傷つけない、壊さない(笑)
2.オペアンプ、電解コンデンサはすべて交換する。さらなる音質向上を期待して高グレード品を利用、のちのち交換できるようにオペアンプやCMOS ICにはソケットを利用、半田補正はしっかり行う。
3.電気的リフレッシュがまずは大事なので電源部を重点的にメンテナンスする

なお、IC類をソケットに挿入する際には、接触不良の未然防止のため、全ての足をケイグで磨くこととした。

部品は若松通商、マルツパーツで購入。

方針が決まり、材料が揃った。後は実行あるのみ(笑)

さっそく電源ボックスからメンテナンスをスタートさせる。

(電源ボックス)

Dscn3074

スイッチはSDG5P-E。スパークキラーはヒビだらけで交換必須だが、このスイッチが曲者である。外から見て綺麗でも中は真っ黒、接触不良となる故障が多いそうだ。事実、以前知り合いから借りたQUAD44もそうだった。再利用することもあろうかと取り外して慎重に分解して中を見ると…

Dscn3077

あららやはり。左側が真っ黒だ。磨いて使えなくはないが、QUAD44の場合、このスイッチを交換しない限り、「メンテナンス済み」とは言えない。このスイッチを交換しない限り、時限爆弾を抱えているようなものだ。接触不良となるのも時間の問題なので、若松通商から取り寄せたSS-13に交換する。うちでは44単品でしか使わないので、ここに大きな突入電流が流れることはないだろうから今後交換の機会はなさそうだ。とはいっても予備として何個かストックしてある。

スパークキラーは取り回しを良くするために、リード線タイプではなく、ビニール被覆線タイプのものを使用した。SS-13の取り付けにはビスとナットが必要だが寸法もぴったり、無事交換が終わった。

Dscn3079

半田補正をして、トランスのアウト側電圧を測定して終了。できあがり。

Dscn3080

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次は、電源基板のメンテナンスを行う
(電源基板)

Dscn3093

パーツ交換と半田補正を行う。特にスルーホール部の半田補正は念入りに。

電解コンデンサは管球アンプの製作や、他のプリアンプのメンテナンスで実績のあるニチコンのオーディオ用(ファインゴールドなど)を使用した。ツェナーダイオード、ブリッジダイオードは、規定の電圧さえ出ていれば特に交換の必要は無いが、今後の安定利用を目的として念の為に交換した。いわゆる予防保全というもの。リレー交換はオーバーホールのお約束。4066系のICはそう簡単に壊れるものではないし、現にこの44も全く問題なく動作していたが、このICは価格も安く、最新型に近いものを使用することによって、少しでも音のリフレッシュに貢献できればということで交換。トランジスタは代替品が無さそうなので、壊さないように慎重に作業をした。

<交換パーツ>
電解コンデンサ:ニチコンオーディオ用(25V1000μ、50V47μ)、TOSHIN音響用ハイグレード品(50V100μ)
ツェナーダイオード:HZ15-3-E(15V)、HZ7C2-E(7.5V)
ブリッジダイオード:W02G-E4
リレー:G5V-2-12V
IC:TC74HC4066AP(F)(TC4066BPも準備したが未使用)


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次はトーンコントロール基板のメンテナンス
(トーンコントロール基板)
Dscn3089

パーツ交換と半田補正を行う。

オペアンプは特に上級タイプのものにはせず、同一型番の最新型に交換することにした。予算の都合というわけではなく、この基板はQUAD44の音のキモとなる部分なのでまずはリフレッシュを基本としたためである。もちろん、ソケットにしたので後で簡単に交換できる。

<交換パーツ>
電解コンデンサ:ニチコンオーディオ用(35V100μ)
オペアンプ:TL072CP


最後に各モジュール。
オペアンプの交換が容易に出来るようにソケットを使用。

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(DISC)
Dscn3094

パーツ交換と半田補正を行う。

カップリングの2.2μはニチコンファインゴールド品やディップタンタルを準備したが、迷いに迷ってニチコンMUSE(BP)を使用した。このコンデンサは使い始めはがっかりの音しか出ないが、後から大化けするのを管球アンプに使用して知っている。少なくとも今入っている怪しいコンデンサよりは遥かに音質的に信用できるものだ。カートリッジの負荷となる47kΩには、精度も音も期待してVishayVSRを使用した。オペアンプはQUAD44のメンテナンスに関するネットやオーディオ店からの情報を参考にOPA134PAを使用した。アナログプレーヤー2台体制となったために復活させた44だ。いずれは名品と呼ばれるOPA627をこのモジュールに使用してみたいが、どうだろうか。

<交換パーツ>
電解コンデンサ:ニチコンMUSE(BP)(50V2.2μ)
                      ニチコンファインゴールド(25V47μ)
抵抗:VishayVSR(47kΩ)
オペアンプ:OPA134AP

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(RADIO、CD/AUX) 写真はCD/AUXモジュール。なんともシンプルな。
Dscn3099

パーツ交換と半田補正を行う。
オペアンプしか交換するものがないので上級品に交換する。

<交換パーツ>
オペアンプ:OPA134PA(RADIO)、OPA2134PA(CD/AUX)

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(TAPE)
Dscn3095
パーツ交換と半田補正を行う。

テープは使いそうもないので、オペアンプは同一型番の最新型のものとし上級品は使わない。電解コンデンサは音響用ハイグレード品(今回初使用)に交換。

<交換パーツ>
電解コンデンサ:TOSHIN音響用ハイグレード(25V100μ)
オペアンプ:TL071CP

セレクタスイッチ基板は省略。半田補正のみ。

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回路図とメンテ前の写真、現物を再度確認して組み上げる。半田補正でブリッジさせていないか、電解コンデンサの極性間違いはないか、ツェナーダイオードの方向性はあっているか、オペアンプの挿入方向は大丈夫かなどを再度念入りに確認しながら行う。

なお、スイッチの延長棒を入れ忘れるともう一度組み直しになるので要注意。

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(交換した部品)
Dscn3098_2

電解コンデンサ19個、スイッチ1個、スパークキラー1個、タンタルコンデンサ2個、リレー1個、ツェナーダイオード4個、ブリッジダイオード1個、抵抗2個、IC4個、オペアンプ14個

コンデンサ類に容量抜けはなかった。
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ふう疲れた。

メンテナンスの結果、リレーのばたつきも無くなったし、リフレッシュされた音に満足。音の詳細レポートはやめておく。どんどん音が変わっていくから。
TAPE以外のモジュールは、TL071の代わりとしてOPA134、TL072の代わりとしてOPA2134を使ったが他のオペアンプだとまた音が違うのだろうなあ。
おいおいやってみよう。

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2012.12.22追記

オペアンプの交換を行う。

RADIO   TL071CP×2→OPA134PA×2(ここにOPA604APを入れると発振する)
OPA134PAにするとメリハリが出てモニタ調な音になる。結構厳しめの表現だがグレードは確実に向上している。普段は使わない端子なのでこのままいじらないでおく。

CD/AUX TL072CP×1→OPA2134PA×1→LME49860NA×1
OPA2134PAと比べると明らかに音のグレードに差がある。新鮮で生き生きとして音空間の見通しがとても良い。このLME49860NAというオペアンプは素晴らしい。大成功。とはいえDISCやTAPEモジュールでの結果を踏まえるとOPA2604APも聴いてみたいところ。

2012.12.24追記:近所のパーツ屋でOPA2604APとLME49720NAが買えたので早速テストしてみた。

結論から言うと、クラシックならば
LME49860NA>LME49720NA>OPA2604AP>OPA2134PA>TL072CP
                          

JAZZやROCKならば
LME49860NA>OPA2604AP>LME49720NA>OPA2134PA>TL072CP
                          
となった。完全に音の好みだけであって、必要とするオーディオ的なグレードは全て満足している。LME49860とLME49720は非常に音が似ているが、懐の深さの差、余裕感の差で49860の勝ち。TELARC録音のように情報量が豊かで再生が難しいソースで聴き比べるとその差が本当によくわかる。

OPA2604APはある意味面白い音。周波数特性を調べてもおそらくはわからないだろうが、聴感上、三つ山特性のような味があって、音楽を聴く上ではそれがとても効果的だ。ドンシャリというのもわからないでもないが、もともとドンシャリに近い味付けのシステムに入れるから余計気になるのではないかな。少なくともQUAD44のCD/AUXモジュールで使う上ではとても戦略的で効果的な選択といえると思う。音楽がとてもリッチになる。イギリスのプリというよりはこれではアメリカのプリ、マッキンだ(笑)。JAZZやROCK、クラシックいずれも古い録音に向く。それしか聴かないのであればこれで十分と思う。

こういったリッチさとハイファイのどちらも備えているのがLME49860。優秀録音もきちんと再生でき、古典的録音もそれなりに聴かせる味わいがあり、しかも極めてハイフィデリティな出音だ。オーディオ用の素子としてとても素性の良いものと思う。私の聴くソースから行くとOPA2604APでも良いのだが、悩みに悩んでLME49860でキメとした。

DISC      TL071CP×2→OPA134PA×2→OPA604AP×2
やはり評判の良いオペアンプはやはりそれだけの事はある。これは好みの音だ。モニター調で生真面目な表現のOPA134PAと比較して音の空気感、ライブ感、エネルギー感が全く違う。にもかかわらず分解能が向上。これまた大成功。CD/AUXモジュールでOPA2604APを使った時の感想のとおり、やはり音味は濃く、盤によっては少し大げさか。だが、これはこれでグレードとしては相当なものだと思う。いずれ、ここにはオペアンプ界のトップ(?)に君臨するOPA627を投入したいところ。

TAPE1     TL071CP×2→OPA134PA×2→OPA604AP×2
TAPE2     TL071CP×2→OPA134PA×2→OPA604AP×2
気を良くして、TAPEモジュールの2枚ともOPA604APに交換。RADIOモジュールでは発振したOPA604APもTAPEモジュールでは発振しない。OPA134PAとの比較はまさにCD/AUXやDISCモジュールで聴いた音の違いに近い。これも大成功。

とここまで、QUAD44のオペアンプ交換状況をまとめてきたが、ここまでくるともう以前のQUAD44の音では無く複雑な気分ではある。今まで感じていた「QUAD44らしい音」とは通常品の電解コンデンサやディップタンタルコンデンサ、TL071や072の音だったのかという気もする。やり過ぎの感はあるが、音が確実に良くなっているのでまあいいか。

---2012.12.29追記---
我慢しきれず、OPA627APを注文した。発送便が遅れたようだが年末年始の休みに間に合ってよかった。

さっそくDISCモジュールに投入。最初こそ、地味目の音だったが、LPを1枚 2枚と聴いていくうちにどんどんベールが剥がれていき、最後は音楽しかなくなった。なるほどね。名オペアンプと言うだけある。耳を澄ませてこちらから聴きに行かなくても、きちんと説得力を持って向こうから音楽がやってくる。楽器ひとつひとつが実に明快に聴こえるのだが決して嫌味にならず、空間の中で響き合 い溶け合う。でありながら直接音と間接音の描きわけが実に見事。そして音空間が立体的で前後左右上下をきちんと描き分ける。凄いなこのオペアンプ。

ちょっとまて、プラシーボの可能性もあり...ということでOPA604APに戻して聴いてみた。604は604で良いのだが、やはり再現力、凄みでOPA627APの勝ち。海外ハイエンド機で使われていると言うのは本当なんだろう。オペアンプ2個に何千円も使うのは...と思う人は多いかもしれないが、真空管に比べたら安いもの。いやはや良いものが手に入って本当に良かった。

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DISCモジュールが決まったので、これで各モジュールのオペアンプ遊びは終わりとし、トーンコントロール基板のオペアンプは交換しないこととした。理由は消費電力。現在は測定上電圧降下は見られないが、トーンコントロール基板のオペアンプ5個を全部高性能品に交換したらおそらくは電源が持たないだろう。抜本的な電源強化を行わない限り安定した性能維持は難しいだろうし、外部電源化はせっかくの可愛いプリアンプが台無しだ。(やってはみたいが)

さあ、あとはひたすら音楽を楽しむだけだ。
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なお、今回のメンテナンスにあたって、数多くのサイトの記事を参考させていただきました。厚く御礼申し上げます。

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