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t = -0 の初期状態 |
第3章の復習と補足を追加します.
第3章の復習と補足:(1) t 軸上に特異点をもつ f(t) の -∞ から ∞ までの積分 I の主値は,f(z) がジョルダンの補助定理の条件を満たせば [32%1] のようにして計算できる.また [33%3] からも分かるように特異点周りの半円は反時計回り,時計回りのいずれを用いても計算結果自体は正しい.
(2) [32%3] を見れば分かるように jζ(ω) は単位ステップ関数 u(t) のフーリエ変換である.通常の実偶関数のフーリエ変換はフーリエ変換の実数部に等しいので u(t) にもこれを適用すると jζ(ω) の実数部 (1/2){u(t) + u(-t)} のフーリエ変換が 2πδ(ω) に対応する.[1%1] の u(t) では u(0) は未定義であるが 2πδ(ω) のフーリエ逆変換は定数1になる.
(3) jζ(ω) を使わなくても,δ(t) のフーリエ変換は (Fδ)(ω) = 1 であることに着目し,通常の関数の場合に成立する公式 (F(Fg))(t) = 2πg(-t) がδ(t) でも成立すると仮定すれば,f(t) = 1 である f のフーリエ変換は (Ff)(t) = 2πδ(-t) = 2πδ(t) となる(f(t) は主値積分でも計算できない).
(4) u(t) のフーリエ変換を 1/jω + πδ(ω) とすることは,特異点周りの積分路として時計回りの半円を採用したことを意味する.このことはラプラス逆変換のブロムウィッチ積分路が s の右半平面内にとられていることに対応している.
(5) ラプラス変換の場合,u(t) のラプラス変換は 1/s であるが,このためには初期値を t = -0 でなく,t = +0 で考えねばならない.例えば上図の電気回路で,t = 0 でスイッチがオンになったときの過渡現象は,t = +0 で両キャパシタの両端の電位が等しくなった状態を初期状態としなければならない.