智徳の轍 wisdom and mercy

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◎犠牲祭の意味

2005-12-03 | ☆【経典や聖者の言葉】

【質問】
 何を目的とし、この世界において、尊い人たち、適任の人たち、武人たち、祭司たちは、愛欲本質神たちに対して、独断の方法で犠牲祭をしたのですか。

【回答】
 この世界において、これらのどんな尊い人たち、適任の人たち、武人たち、祭司たちも、愛欲本質神たちに対して、独断の方法で犠牲祭をしたのは、この世における最高の状態を望み、老いに染みつかされて、犠牲祭をしたのである。

【解説】
 これは、犠牲祭、――つまり護摩法の意味について問うているのである。それに対して、真理勝者サキャ神賢は、「それは、結局老いから逃れたいがために、そして、この現世において最高の状態を得たいという欲望を目的として、犠牲祭、護摩法を行なった」と説いているのである。

◎真我独存と中道

2005-12-01 | ☆【経典や聖者の言葉】

【質問】
 この世界において、だれが合一し喜ぶ人なのですか。だれに種々の心が乱れたことがあることはないのですか。だれが双方の極端な状態の証智によって、真ん中において熟慮し、けがされることがないのですか。だれを偉大な男と明言するのですか。だれがこの世で、耐えきれない欲望を圧倒したのですか。

【回答】
 種々の感覚の喜びの対象において神聖行をなす、すなわち、渇愛を離れ、いつも記憶修習し、推定し、煩悩破壊する向煩悩滅尽多学男、彼に種々の心が乱れたことがあることはない。彼は双方の極端な状態の証智によって、真ん中において熟慮し、けがされることがない。彼を偉大な男とわたしは明言する。彼はこの世で、耐えきれない欲望を圧倒した。

【解説】
 この第一の質問、「合一し喜ぶ」とは真我独存の状態を表わしている。そして、この真我独存のときには、心は乱れないことを表わしている。
 これに対するサキャ神賢の答えは、「種々の感覚の喜びの対象において神聖行をなす、すなわち、渇愛を離れ、いつも記憶修習し、推定し、煩悩破壊する向煩悩滅尽多学男、彼に種々の心が乱れたことがあることはない」というものなのである。ここでの「推定」とは、「これは苦であるか楽であるかの検討」ととらえてよい。
 第二の質問に対して、サキャ神賢は左右を完全に経験し、理解し、そして中道に立っている者こそを、けがされない魂であると言ってらっしゃるのである。
 さらに、左を離れ、右を離れた魂が、大いなるすべての耐え切れない欲望を圧倒した魂であると言っていらっしゃるのである。

◎三つの要素の打破と進展

2005-12-01 | ☆【経典や聖者の言葉】

【質問】
 この世には、種々の推定された法則がある者たちと、種々の有学、種々の独断がある者たちがいますが、それらの進展を質問いたします。

【回答】
 種々の感覚の喜びの対象に対して、熱望せず、意識を平穏にし、向煩悩滅尽多学男はすべての法則における善を記憶修習し、托鉢修行者として歩き回りなさい。

【解説】
 ここでは、まだ解脱をしてない者たちに、三つの要素があると説かれているのである。
 その第一は、種々の法則が存在している。この「種々の法則が存在している」とは、まだある観念の枠組みの修行を行なっていることを表わしている。
 第二は、種々の有学である。学問が必要であるということは、まだその全体の真相を、ありのままに自己の光によって理解し得ないことを表わしている。
 そして、第三の種々の独断とは、偏った見解に立っていることを表わしている。
 これらの三つの要素が打破されて、初めて解脱が訪れるのである。そして、解脱に至るためには、「種々の感覚の喜びの対象に対して、熱望せず、意識を平穏にし、向煩悩滅尽多学男はすべての法則における善を記憶修習し、托鉢修行者として歩き回りなさい」とおっしゃっているのである。
 ところで、わたしたちが経験をなし、それを喜びだと感じるということはどういうことであろうか。そこでは熱が発生する。したがって、もしわたしたちが感覚の対象に対して熱を生起させなければどうなるだろうか。当然、わたしたちは新しい苦しみの因としての道筋を捨断することとなるのである。これが第一である。
 そして第二。法則には二つの法則がある。一つは下向の法則、もう一つは上向の法則である。そして、この上向の法則、つまり高い世界へ至る法則の記憶、および実践、これをなすことにより、わたしたちの下卑な観念はより崇高な観念に移行することとなる。これが、第二のステップである。
 そして第三番目は、“無所有”、しかも托鉢修行によってただ生きるためだけに食【じき】を取る。これを繰り返しながら修行しなさいと、真理勝者サキャ神賢は言っていらっしゃるのである。