智徳の轍 wisdom and mercy

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キサーゴータミー

2008-05-18 | ☆【経典や聖者の言葉】

一 バドゥムッタラという名の勝者、一切の法における究竟者であるグルは、今から十万カルパの昔に出現なさいました。
二 そのとき、私はハンサヴァティーの、ある家に生まれ、その最上の方のみもとを訪れて、帰依いたしました。
三 そして、四諦に関連した、微妙で、蜜【みつ】のような、心の寂静と安楽をもたらす、その方の法を聞いたのです。
四 あるとき、勇者、最も優れた方は、粗衣【そい】の比丘尼として、第一の位に置いて、称賛なさいました。
五 比丘尼の徳を聞いて、多くの喜びが生じて、可能な限り仏陀に帰依して、
六 その牟尼に頂礼して、その地位を願い求めました。そのとき、等覚者、グルは、その地位を得ることを喜ばれ、こうおっしゃいました。
七 「今から十万カルパの後に、オッカーカ族の生まれで、ゴータマという名の師が、この世に出現するだろう。
八 お前は法の中において、法によってつくられた後継ぎの子供であって、キサーゴータミーという名の師の弟子の尼となるだろう。」
九 そのとき、それを聞いてうれしくなって、一生涯、勝者、教え導く方に、優しい心で必需品を奉仕いたしました。
一〇 その善をなしたカルマと思願によって、人の身を捨てて、私は三十三天に行きました。
一一 この賢なるカルパにおいては、バラモンの末裔であって、大いなる名声がある、カッサパという名の、論者の中で最も優れた者が出現なさいました。
一二 そのとき、大聖の従者は、最高の城バーラーナシーのカーシ王キキーという名の者でした。
一三 私は彼の第五女であって、ダンマーという名で知られていました。そして、勝者の法を聞いて、出家を希望したのです。
一四 私達の父が許さなかったので、そのとき私達は家の中で二万年の間勤精進して、
一五 幼い娘としては梵行を行じ、幸福に暮らしていた七人の王女としては、仏陀へのおもてなしを楽しみ、喜んだのです。
一六 その七人とは、サマニー、サマナグッター、ビックニー、ビッカダーイカー、ダンマー、およびスダンマーと、第七はサンガダーイカーでした。
一七 それは今生では、ケーマー、ウッパラヴァンナーと、パターチャーラーと、クンダラー、私とダンマディンナーと、第七はヴィサーカーのことです。
一八 その善をなしたカルマと思願によって、人の身を捨てて、私は三十三天に行きました。
一九 そして今、最後の有では、私は困窮した、財産がなく、裕福ではない、商人の家に生まれ、財産がある家に嫁いだのです。
二〇 夫を除いて、残りの人は私を無産者と見ました。そして、子供を産んだときに、すべての人に親切にされました。
二一 その幼く賢い子供は、幸福の中で暮らし、あたかも自らの命のように私に愛されたとき、子供はあの世に行ったのです。
二二 憂いに悩み、言葉も哀れに、目には涙を浮かべ、泣きっ面をして、しかばねを抱いて、私は嘆きながら歩きました。
二三 そのとき、ある人によって同情されて、最上の医者のもとを訪れて、「子供が生き返る薬をお与えください」と言ったのです、友よ。
二四 「死者のない家にあるカラシの実を、そこから持ってきなさい。」
と、教え導く方便に熟達した勝者はおっしゃいました。
二五 それからサーヴァッティーに行きましたが、このような家が見つからなかったので、それではどこでカラシの実を手に入れるのだろうと思い、私は念を得たのです。
二六 しかばねを捨てて、世界のグルのみもとを訪れると、遠くに私を見て、妙なるお声でおっしゃいました。
二七 「生滅を見ることなく百年生きるよりも、一日生きて生滅を見た方がよい。
二八 それは村落の法ではなく、集落の法ではなく、また一家の法でもなく、無常であることは、天を含む一切の世界の法なのだ。」
二九 これらの詩句を聞くや否や、法眼は清められ、法を了知して、それから出家者となりました。
三〇 こうして出家し、勝者の教えに励むうち、程なくして阿羅漢の位を体得いたしました。
三一 私は神足と天耳界において自在となり、他心を知り、師の教えを順守する者となりました。
三二 宿命を知り、天眼は清浄となり、一切の漏を捨てて、清浄でけがれなき者となったのです。
三三 私は師に帰依し、仏陀の教えを実践し、重荷を捨て、有に導く煩悩をすべて取り除いたのです。
三四 その意義のために、私は在家から出家者となりました。生存の束縛を滅尽する、その意義を、私は体得いたしました。
三五 義・法・詞、また、弁における私の智慧は、最勝なる仏陀のみもとで、無垢【むく】、清浄となりました。
三六 ゴミたまりや墓場や道端から、ボロを持ってきて、正装を作って、粗衣を着ました。
三七 勝者は粗衣をまとうその徳に満足なさり、教え導く方は会衆の中で、その第一の位に置いてくださいました。
三八 私の諸々の煩悩は焼き尽くされ、有はすべて断じられ、もはやこの世に転生することはありません。
三九 実に私はよく至れる者です。我が最勝なる仏陀のみもとで、三明は体得され、仏陀の教えは実践されるのです。
四〇 四無礙解と、またこれら八解脱と、六通を現証して、仏陀の教えを実践いたします。
――このように、長老キサーゴータミー比丘尼は、これらの詩句を唱えたのである。

バッダー・クンダラケーサー

2008-05-18 | ☆【経典や聖者の言葉】

一 バドゥムッタラという名の勝者、一切の法における究竟者であるグルは、今から十万カルパの昔に出現なさいました。
二 そのとき、私はハンサヴァティーの長者の家に生まれ、その家は、様々な財宝が輝き、大いなる安楽がありました。
三 その大いなる勇者のもとを訪れて、説法を聴き、それから清らかな信を起こして、私は勝者に帰依いたしました。
四 そのとき、大悲ある方、グル、パドゥムッタラは、清浄な比丘尼を速通智者【そくつうちしゃ】の中の第一の位に置かれました。
五 それを聞いて喜び、大聖に布施を施して、おみ足に頂礼し、その状態を望んだのです。
六 大英雄は喜ばれ、このようにおっしゃいました。
「賢く善なる者よ、お前の願いはすべて成就するだろう。寂滅によって幸福があるのだ。
七 今から十万カルパの後に、オッカーカ族の生まれで、ゴータマという名の師が、この世に出現するだろう。
八 お前は彼の法の中において、法によってつくられた後継ぎの子であって、バッダー・クンダラケーサーという名の師の弟子の尼となるだろう。」
九 その善をなしたカルマと思願によって、人の身を捨てて、私は三十三天に行きました。
一〇 そこから没して、夜摩天に行き、そこから没して、兜率天に行き、それから化楽天に行き、他化自在天に行きました。
一一 どこに生まれても、そのカルマによって、いつもそこの王の皇后となったのです。
一二 そこから没して、人間界では、転輪王や小国の王の皇后となりました。
一三 天界や人間界で福徳を享受し、一切の所で幸せ者となって、多くのカルパを輪廻したのです。
一四 この賢なるカルパにおいては、バラモンの末裔であって、大いなる名声がある、カッサパという名の、論者の中で最も優れた方が出現なさいました。
一五 そのとき、大聖の従者は、最高の城バーラーナシーの人間の主、カーシ王キキーという名の者でした。
一六 私は彼の四女であって、ビッカダーイカーとして知られていました。そして、最高の勝者の法を聴いて、出家を希望したのです。
一七 私達の父が許さなかったので、そのとき私達は家で二万年の間勤精進して、
一八 幼い娘としては梵行を行じ、幸福に暮らしていた七人の王女としては、仏陀へのおもてなしを楽しみ、喜んだのです。
一九 その七人とは、サマニー、サマナグッター、ビックニー、ビッカダーイカー、ダンマー、およびスダンマーと、第七はサンガダーイカーでした。
二〇 それは今生では、ケーマー、ウッパラヴァンナーと、パターチャーラー、そしてこの私、キサーゴータミー、ダンマディンナー、第七はヴィサーカーのことです。
二一 その善をなしたカルマと思願によって、人の身を捨てて、私は三十三天に行きました。
二二 そして今、最後の有では、最高の城ラージャガハの裕福な長者の家に生まれました。私が年頃だったとき、
二三 盗賊が死刑のために引かれていくのを見て、私は心を染めました。そのため、父は千金によって彼を死刑から解き放ち、
二四 私の心を知って、私を彼に与えたのです。私は彼を安らがせたので、こよなく愛され、重宝がられました。
二五 けれども、彼は装飾品への貪りのため、華鬘【けまん】を持ち帰った私の敵となり、盗賊の住む崖まで連れていき、私を殺そうと謀りました。
二六 そのとき、私はサットゥカに向かってひれ伏して、よく合掌し、自分の命を守りながらこのように言ったのです。
二七 「この金の腕輪、たくさんの真珠・琉璃【るり】……、全部持っていってください。あなた、私を寝床の奴隷と呼んで。」
二八 「運のいいやつだ。さあ、飾り物を外すんだ。めそめそするんじゃない。持ってきた財産をよこさないと承知しないからな。」
二九 「私が覚えている限り、そして、私に物心がついて以来、あなたよりほかに愛する人を知らないというのに。」
三〇 「さあ、来い。お前を抱いてやろう。」
 そして私は、彼を右繞してこう思ったのです。「今や、再び、私はあなたに抱かれることはないでしょう」と。
三一 あらゆる場合に男が賢明であるわけではありません。たとえ女でも、賢明なために、鋭く見抜くことが度々あるのです。
三二 あらゆる場合に男が賢明であるわけではありません。たとえ女でも、賢明なために、利を考えることがあるのです。
三三 実に敏感に、急速に、素早く考察し、そのとき私は野獣のようなサットゥカに弓を十分に引き絞って殺しました。
三四 起こったことを素早く悟らない者は、あの愚鈍な慧の盗賊のように山の洞穴で殺されるのです。
三五 また、起こったことを素早く悟る者は、障害となる敵から脱するのです。あたかも、そのとき私がサットゥカから逃れたように。
三六 そのとき私は、サットゥカを山の険路に落として、白衣行者のもとに至り、出家しました。
三七 そして、毛抜きで私の髪の毛をすべて抜き、出家をさせ、常に自ら宗義を説きました。
三八 そのため、それを学び、独り座してその宗義を考察しました。すると、犬が人の手の、
三九 切断されたのをくわえてきて、私の近くに落として去っていきました。その蛆虫【うじむし】が群がっている手を見て、私は相を得たのです。
四〇 そして恐怖して立ち上がり、同法者に尋ねると、彼はこう言いました。
「釈迦の比丘が、その意味を知っている。」
と。
四一 その私は、その意味を尋ねようと、仏陀の比丘達のもとを訪ねました。すると、彼らは最高の勝者、仏陀のみもとに私を連れていきました。
四二 そのお方は私に法を説いてくださいました。蘊・処【しょ】・界は、不浄・無常・苦であると。また、それらは無我であるとグルはお示しくださったのです。
四三 その法を聴いて、私の法眼は清浄になり、ゆえに私は正法を知り、出家・具足戒【ぐそくかい】を、
四四 懇願いたしました。グルは、
「来なさい、バッダーよ。」
とおっしゃって、私はそのとき具足戒を受け、少しばかりの水を見たのです。
四五 私は足を洗うことによって生と滅とを共に知り、そのとき「諸行はそのように無常である」と思いました。
四六 そして、私の心は全く取著【しゅじゃく】がなく解脱しました。そのとき勝者は、速通智において私が第一の位であるとお告げになったのです。
四七 私は神足と天耳界において自在となり、他心を知り、師の教えを順守する者となりました。
四八 宿命を知り、天眼は清浄となり、一切の漏を捨てて、清浄でけがれなき者となったのです。
四九 私は師に帰依し、仏陀の教えを実践し、重荷を捨てて、有に導く煩悩をすべて取り除いたのです。
五〇 その意義のために、私は在家から出家者となりました。生存の束縛を滅尽する、その意義を、私は体得いたしました。
五一 義・法・詞、また、弁における私の智慧は、最勝なる仏陀によって無垢・清浄となりました。
五二 私の諸々の煩悩は焼き尽くされ、有はすべて断じられ、一切の漏は尽き果てて、もはやこの世に転生することはありません。
五三 実に私はよく至れる者です。我が最勝なる仏陀のみもとで、三明は体得され、仏陀の教えは実践されるのです。
五四 四無礙解と、またこれら八解脱と、六通を現証して、仏陀の教えを実践いたします。
――このように、バッダー・クンダラケーサー比丘尼は、これらの詩句を唱えたのである。