boban のんびり 株投資日記

備忘録です。ディトレードなどの短期勝負ではないので、日々の変化はあまりありません。

日銀 黒田総裁 あいさつから

2015-06-07 | 2015
原文はここ


少し長い目でみた政策上の論点を提示したいと思います。先般の金融危機後、各国では、非伝統的金融政策の実施にもかかわらず、景気回復が従来の回復パスよりも緩やかなものにとどまっています。過去1年ほどの間、学界や中央銀行サークルでは、この点について活発な議論が行われてきました。これは、1930年代後半にアルビン・ハンセンが唱えた「長期停滞論」に関するローレンス・サマーズの再考に端を発しています。そして、金融危機後の緩慢な景気回復について、需要サイドの恒常的な弱さに起因する見方や、供給サイドの生産性の低さに起因する見方などが提示されています。

このように、長期停滞論を巡っては様々な解釈や見解が存在しますが、こうした金融危機後の緩慢な景気回復を巡る議論を踏まえて、政策上の論点を3点提示したいと思います。

第1の論点は、金融政策運営において供給サイドへの影響をどの程度考慮するべきなのか、ということです。先般の金融危機後における緩慢な景気回復の背景の一つとして、需要の低迷が、設備・研究開発投資の減少や労働意欲の喪失等を通じて供給サイドを毀損し、さらに成長期待の低下が需要不足を引き起こしうる、といった需要と供給の相互連関の重要性が指摘されています。一方、金融政策運営の伝統的な考え方によると、潜在成長率や自然失業率といった供給サイドは、金融政策運営において所与のものとして扱われます。前述の緩慢な景気回復のメカニズムは、こうした伝統的な考え方にどのような影響を及ぼしうるのでしょうか。

第2の論点は、低い自然利子率のもとでの望ましい金融政策手段は何か、ということです。仮に、長期停滞論が示唆するように、自然利子率が、今後中長期にわたって過去と比べて相対的に低い水準にとどまるのであれば、その間、名目金利がゼロ近傍にとどまり、さらに、金利正常化後もゼロあるいは非常に低い水準に低下しやすくなる可能性があります。その場合、「出口の先」においても、現在行っている非伝統的金融政策の役割が重要となり、ひいては、非伝統的金融政策はいわゆる「ニューノーマル」のもとでの伝統的金融政策として位置づけられるようになるのでしょうか。

第3の論点は、望ましいポリシー・ミックスとは何か、ということです。
低い自然利子率のもとで経済が中長期にわたって停滞する場合、望ましい政策対応として、金融政策、財政政策、構造改革をどのように組み合わせるべきなのでしょうか。また、そうした最善のポリシー・ミックスを制約しうる要因――例えば、累増する政府債務残高や共通通貨圏のもとでの制約――がある場合には、次善のポリシー・ミックスとして、どのような政策間の代替が考えられるのでしょうか。