ガラパゴス通信リターンズ

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野ギャル

2009-10-23 12:04:46 | Weblog
 若者の間で農業ブームが起こっています。「野ギャル」と呼ばれるタレントが人気を博し、若者向けの農業雑誌も創刊されているようです。「おしゃれじゃなければ農業じゃない!」などという惹句をみると?と思わないでもありません。しかし、5、6年前から若者たちの間では農業のボラバイトが結構盛んに行われていました。ボラバイトとはボランティア+アルバイト。農作業を手伝って日当はもらうだけれどもどんなに遠くに行っても旅費は自弁。北海道や沖縄にも長期働きに行った学生もいました。そう考えてみるとこの農業ブームも一過性のものとばかりはいえないでしょう。

 今年はぼくのゼミで初めて、農業で卒論を書いている学生がいます。彼女のおじいさんとおばあさんが、神奈川でみかんを作っていて、30年前は、みかんの価格が一キロ200円だったものが、いまでは50円にまで下がっていると言っていました。30年前といえば、ぼくが大学院に入った年で、そのころ大卒初任給は10万円ぐらいだったはずです。物価は倍。収入は4分の1。いまは果物はいろいろある。しかもジュースやアイスクリームに押されて消費量も減っています。愛媛等ブランド産地のみかん以外は外国産果物並みの値段しかつかないことが原因のようです。

 これでは一部のブランド農産物を生産している農家以外は生き残れないでしょう。農家への所得保障は絶対に必要であると思いました。やはり農業では食えません。しかしその食えない農業に何故若者たちが惹かれていくのか。これは考えるに値する問いかけです。やはり土と触れ合う人間的な生き方に魅力を感じる若者が多いということなのでしょう。そして「食えない」とは言っても、それはお金が稼げないという意味。「食う」ものを作っているのです。食糧危機にでもなれば、これほど強い職業はありません。フリーターならずとも、農業に憧れる所以でしょう。