ガラパゴス通信リターンズ

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美女と野球

2009-05-09 07:37:41 | Weblog
 連休を目部に控えた先月末の日曜日。骨子の吹奏楽部の定期演奏会があった。例年のことながらこの演奏会の最前列には場違いな丸坊主の集団が陣どっている。硬式野球部員である。ブラスバンドの応援のない甲子園大会の予選など、それこそなんとかのないコーヒーのようなもの。お礼の意味をこめて、野球部員全員で聴きにきてくれるのである。しかし音楽に関心の高い野球の選手が多いとは思えない。日頃の猛練習の疲れもあるのだろう。後ろからみても彼らが盛大に船をこいでいるのが分かる。

 この演奏会は吹奏楽部の年間最大行事。受験を来年に控えた3年生はこれで引退する。演奏だけではなく、男子生徒が主役のコントがあり、センスがよくてとても楽しい。骨子も中学時代にこの定期演奏会を聴きにきたことが、S高受験の動機付けになった。パンフレットも自分たちだけの力で立派なものを仕上げている。注がれたエネルギーは生半可なものではない。

 演奏会が終わりに近づくと涙を流す女子部員の姿が目につく。感動的な光景である。だがフルートのある女の子はこんなことを言っていたという。「これで先輩とお別れだと思うとこみ上げてくるものがあったけれど、野球部の寝ているのが目に入って涙が引っ込んだ」。まあ、気持ちは分かる。野球部に罪はないのだが。
 
 吹奏楽は女子が主体の部活。男子部員は少数で賢そうだが、線の細い、いまでいう「草食系男子」が主流を占めている。先輩には東大の野球部で活躍している投手もいる文武両道のチームだが、やはり野球部員は別世界の人たちという印象だ。C.P.スノーは文系理系二つの文化の分裂に警鐘を鳴らしていたが、文科系と体育会系という断裂もまた存在するのではないか。演奏会の後、野球部の人たちは会場と隣接する大きな公園で楽しそうに遊んでいた。猛練習の日々のなかでの息抜きの一日なのだろう。頑張ってください。夏の大会。