ガラパゴス通信リターンズ

3文社会学者の駄文サイト。故あってお引越しです。今後ともよろしく。

本が届いた

2008-02-28 16:49:20 | Weblog
昨日はいささか極端な記事を書いたと反省している。不適切と思われる部分は修正しておいた。記事を投稿したしばらく後に本が届いた。3年半苦労して書き上げた作品である。大学では大変なことが続き、楽な仕事ではなかった。それだけに嬉しかった。

 ゲラと本になった時とではやはり印象も違う。全編過激なトーンが貫いていることは間違いないが、語りの柔らかさにまぎれて大きな違和感を与えるところはない。ややエキセントリックな感のあることは否定できないが、学者の作品、大学教授の作品といって恥ずかしくないものになっていると思う。そしてぎりぎりのところで社会学の作品になっているとも考えている。むしろ私は、憲法や歴史認識の問題を社会学の土俵で持ち出す自信を深めた。

 識者への批判の部分もよく節度を保っていると思う。平素の私の文章を読みなれた人ならむしろ物足りないと感じることだろう。版元は権威と格式のある出版社である。有能で見識のある編集者が学者の書く文章に厳密なチェックを入れている。少しでもおかしなところのある本が、この会社から市場に出て行くわけが絶対にない。

 2000年に入った頃にこの国のなかでは、少年犯罪が急増し若者が怠け者になったからフリーターが増えたと、青少年をモンスターのように言い募る「ユースフォビア」(青少年恐怖症)が根を張っていた。「ユースフォビア」を生み出した社会心理的メカニズムの分析は、この本のなかで私がもっとも自信をもっている部分である。しかしここで皮肉な事実に気がつく。私は自分の作品とそれがもたらす反響をモンスターのように恐れ、鬱々としていたのだ。作者が作品に復讐されたというべきか。

 私の父はものすごい心配性の人だった。ささいなことが気になって、夜も寝られなくなる。そしてすぐに生きるの死ぬのの騒ぎになるのだ。私はしょっちゅう繰り返される父のどたばたを子どもの頃、ひややかに眺めていた。しかし歳をとることで、自分が父とそっくりになってきたことを認めないわけにはいかない。

 最後になったがこの本の担当のお二人の編集者に御礼をもうしあげなければならない。20年来おつきあいをいただいているベテランのN氏。そして若く聡明な女性編集者のkさん。どうもありがとうございました。3冊目の単著をこのお二人と一緒に生み出すことが、いまの私の願いである。