このところ急激な人口減少で様々なところで噴出し、
ニュースに出るようになりました。
一番多いのは人口減少による会社倒産、廃業です。
その最大原因の人手不足は、この福井県においても影響が出てきました。
それは運転手不足による相次ぐ路線バスの減便です。
しかし、今回、もっと深刻なのは空き家の急増ではないかと思います。
それは空き家率が世界一だといいます。
総務省が2023年の住宅・土地統計調査の結果（速報値）を発表したのは、
本年4月30日ですが、それによれば、全国の空き家は前回調査した5年前から
51万戸増え、過去最多の900万戸と言う驚くべき数字です。
つまり30年前の約2倍、国内の総住宅数における
空き家の割合（空き家率）は、13.8％になったのです。
総務省によれば、一人暮らしの高齢者が亡くなり、
そのまま空き家になるケースが多いという報告です。
また総務省発表の高齢者の人口推計によれば、昨年9月15日時点で、
65歳以上の高齢者は3623万人。
総人口に占める割合は29.1％。80歳以上は
1259万人で、はじめて10人に1人を占めるようになっています。
そして高齢化率は今後も上昇し、
厚生労働省の第3回社会保障審議会年金部会（2023年5月8日）の資料には、
2070年には65歳以上が人口の38.7％を占める、と記されているのです。
しかも少子化の進み方が予想をはるかに超えていますので
国立社会保障・人口問題研究所が2017年に予測した
「日本の将来推計人口」では、出生数が80万人を割るのは
2033年とされていたのですが、現実には2023年に75万8631人（速報値）と
80万人を大きく割り込み、予測より10年も前倒しになってしまったのです。
若い世代がこれほどの勢いで減少する以上、高齢化率も
予測を超えて上昇します。
当然、高齢者の住まいが空き家になり、
高齢化率が高まれば空き家の増加率も比例して高まります。
しかも、若年人口が減り、ひいては日本の人口自体が減少しているため、
空き家に住む人を見つけるのは非常に難しいことになります。
そして空き家が放置されるとまず、住宅は経年劣化していきますが、
空き家になれば劣化のスピードが速くなります。
換気や採光がされない状態が長く続くと、
湿気がたまるなどして老朽化が進みます。
そこに樹枝や雑草が繁茂して、犯罪の根城にされることもありますし、
放火の対象にもなりやすいのです。
このようなことから治安の悪化に直結するだけではなく、
ゴミが不法投棄され、衛生面の問題が発生することもあり、
景観も著しく損ねて、周囲の住環境を劣化させていきます。
このままでは、今後、空き家がさらに増え、
その増加率も高まって各地で地域コミュニティが崩壊し、
ゴーストタウンのような集落が増えていきますので、
もうすぐゴーストタウンマップも出回るでしょう。
しかし、このような空き家の増加は、日本独自の特殊な現象なのです。
国別統計専門サイト「グローバルノート」によれば、
2020年のランキングで13.55％だった日本の空き家率は、世界1位。
日本と同様に高齢化や人口減少が進んでいる国は少なくないのに、
日本にばかり空き家が増加していくのは一体、なぜなのか。
その最大の理由は、中古住宅の流通戸数が極端に少ないことです。
国土交通省の調査（2019年現在）によれば、
日本における中古住宅の流通シェアは、住宅全体の14.7％で、
欧米諸国の6分の1程度にすぎないのです。
現在、冷暖房エネルギーを減らすために、
住宅そのものを省エネ住宅にすることが推奨され
それがSDGsにつながるかのように喧伝されているのですが、
省エネ住宅をどんどん新築することが、
本当に省エネやSDGsといえるのでしょうか。
その結果、空き家は増えているのであれば、
すでに存在する家をできるかぎり活用してこそ、
省エネやSDGsに直結するという発想が出て来ないのです。
日本は欧米諸国等とくらべると、異常なまでに新築志向で、
それはかつての戦争で日本の諸都市が焼け野原になったこと、
地震大国であったので、更地に新築する習慣ができてしまったこともありますが、
日本の政策によって生み出されたものなのです。
私は数年前、滋賀県高島市で中古住宅を購入し、
「古民家ファスティング藤樹の宿」をオープンしましたが、
正直、非常に高額な投資となり、それに対する補助金は一切ありませんでした。
そして中古物件をリニュアールする業者も少なく、
改装費用が高額となるのでどうしても新築になると思いました。
これではますます空き家は増加して、
犯罪の巣窟となり、住民の安全や景観の破壊など
大きな問題が起こることは間違いありません。
少なくとも昨年まで住んでいた高島市はその道を確実に歩んでいます。
