太った中年

日本男児たるもの

フランシスの失敗

2011-04-28 | weblog

サケノメ サカモト (YMO 増殖 タイトゥン・アップより)

そんなワケで奥さん、去年の12月はネネ妻のキ印仕入れによるシヌホド不味いマニラビールを飲んでいた。相方のワンちゃんはビールなら何でもOKのフィリピン男児であるが、日本男児のプリンスはダメだ。ナニか旨いプロタン(おかず)が欲しいつーことで、日々、米屋の近くを徘徊していた。そして米屋から歩いて20秒、走って15秒に位置するフライド・チキンのベンダー(屋台)を発見した。屋台のフライド・チキンは下味がついてないものの揚げたては旨い。フライド・チキンをおかずにして不良在庫の処分に勤しむ日々を過ごした。

 

屋台の売り子ジャニン嬢(19)

ある日のこと酔っ払ったワンちゃんと一緒にベンダーへ行ったところ酔って強気のワンちゃんは何やらジャニンと話し込むではないか。そしてフライド・チキンを買った帰り道、ワンちゃんは話し始めた。「プリちゃん、僕はジャニンみたいな華奢なボディはダメなんだ」、おーそうかワンちゃん、グラマーなボディがセンズリライフのプロタン(おかず)なのかな。しかし、何を会話したのか気になって後日、ジャニンに聞いたところワンちゃんにクドかれたそうだ。けれどもジャニンは断った。相変わらず女の子にモテないワンちゃんだった。

それからジャニンに聞けばこのベンダーのオーナーはトライシクルのドライバーで他に2ヶ所、計3ヶ所でフライド・チキンのベンダーを開業している。鶏1羽の仕入れ値はP70~P80、それを下処理して一度揚げ、各ベンダーに配る。二度揚げして売る鶏1羽の売値はP150、粗利が50%、場代、人件費、その他を引いた利益は30%。ベンダー1ヶ所の日当たり平均売上げはP2000というからP2000×30%×30×3=P54000がオーナーの月収となる。フィリピンでは信じがたい高給取りになる。ベンダー稼業をナメてはイケナイ。

 

妹の彼氏、フランシス(26)登場

ベンダーの売り子ジャニンは妻と同じビコール出身、つーことで米屋を手伝いに来たフランシスを連れてフライド・チキンを買いに行った。フランシスもワンちゃん同様、ジャニンと話し込む。で、帰り道、何を話したか聞いたところ「プリンス、僕はジャニンのような華奢なボディはダメなんだ」、なーんだワンちゃんと同じじゃないか。さてはクドいて空振りしたのか。ところがその予測は外れた。次の日もフライド・チキンを買いに行ったところジャニンの方からフランシスについてアレコレ聞いてきた。そして昨日はマニラに来て1年半ぶりにビコール語の会話をして楽しかったことをフランシスに伝えて欲しいという。へぇーそんなものなのか。

それを伝えるとフランシスの態度は一変、背中に羽が生えて有頂天になった。

フランシスは昔、叔母さんの娘、つまり妻と仲のいい従姉妹をクドいて空振り、毛嫌いされたことがあった。

フィリピン人の特徴的なキーワードに見栄と自慢がある。聞いてもいないのに自慢話をして見栄を張る。フランシスはモテ自慢をした。「プリンス、仕事を終えたジャニンとデートした。と言っても一緒に歩いて彼女が住む古いアパートで紅茶を飲んでクッキーを食べただけ。そして彼女を抱きしめて別れた。」ジャニンはホームシックで故郷へ帰りたがっていた。フランシスと出会ったことが契機になってデートをした翌日故郷に戻った。

それはフランシスにとって最後の甘美な思い出となるかもしれない。その後、地獄の思いを味わうことになる。

昨年末、フランシスは4年間勤めていたレガスピの建築設計事務所を辞め、姉が住むC5つーところに身を寄せ独立することを考えていた。最初はシュウマイのベンダーを始める予定でいた。アドバイスをして欲しいという。場所さえ確保できればジャニンのフライド・チキンのようにベンダーは小資本で出来る効率のいいビジネス。従ってまずC5で場所を探せとアドバイスした。ところが場所の探し方がわからないという、バカだ。

ベンダーの出来そうな空き地を見つけ地主と地代の交渉をする、若しくは既存のベンダーを買い取るのどちらかである。米屋のときもそうだったが話を聞いても行動に移せないフランシスには独立なんて不可能、またどこかへ就職することアドバイスしたがもう勤め人は嫌だと言った。典型的な怠け者フィリピン人である。

それから暫くして今度はタマネギのトレイドをしたいから金を出資して欲しいと申し出た。姉はマニラの問屋街デビソリアでタマネギを販売する仕事をしている。その関連からタマネギ産地で安く仕入れ、デビソリアの公共マーケットで売ることを企画した。どんなものかと思ったが、役に立たなかったとはいえ米屋の仕事を手伝ってくれたから、簡単な事業計画書と資金計画書を作らせてから契約書にサイン、出資した。

フランシスの実家は大地主の百姓で豪邸を建築中だ。タマネギ・トレイドが失敗した場合の担保となる。

そしてフランシスは失敗した。産地でタマネギを計画通り安く仕入れることは出来たが、返済期日の前日、公共マーケットへの販売で大量の売れ残りを作ったとメールしてきた。つまりは米屋の妻と同じく過剰仕入れをしたのだ。フランシスは故郷のビコールで売り捌くといって実家へトンズラ、音沙汰がなくなった。

jet師範から余り追い詰めると窮鼠猫を噛むでトンデモない行動に出るから注意するようアドバイスを受けていたのでまず、フランシスをマニラへ呼び寄せるべく徐々にメールを送った。フランシスは言い訳さえすれば許されると勘違いしていた。そこでフランシスを刑務所に送るべくバランガイ・オフィス(役所)で手続きに入った、とカウンターパンチのメール送った。すると小心者のフランシスは慌ててマニラに戻ってきた。

そして近くのゲイバーでフランシスと会った。そこでもやたら言い訳をするのでその都度話を遮って一方的に淡々と話をした。結論として親から金を借りて返済しろつーことを言うと、それだけは勘弁してほしいという。ならば直接親と会って話をすると言った瞬間、フランシスは泣き出した。ゲイバーのスタッフの視線が集中する。余程、親に体裁を繕いたいのか、今からC5の姉のところに戻り金を借りて返すから2時間待ってくれという。1時間で持ってこいと言うや、果たしてフランシスは姉から金を借りてやっとのこと返済をした。

フランシスと妹とはそれっきりになったが気分は清々している。