心の休憩室 パート2

何度か中断していますが、書きたいことがでてくると復帰しています。

般若心経その9 (業と因果について)

2023-03-19 18:00:54 | 般若心経

【般若心経その9】

 

=== 因果と業について ===

 

この世の法則性を、仏教では「因果」と呼ぶ。

因果とは、ものごとの原因と結果の法則のことである。

 

」とは、私たちがなんらかの意思を持って

ものごとを行おうとする際に発生するパワーで、

悪いことをすれば「悪業」のパワーが生まれ、

善いことをすれば「善業」のパワーが生まれる。

 

これらの「悪業」や「善業」が私たちを将来、

楽なところや嫌なところへ引っ張っていくが、

そこに関係するのが「輪廻」である。

 

輪廻とは「この宇宙には複数の違った生まれがあり、

生き物はそのいずれかの生まれを永遠に転生しつづけると

いう考え方」である。

 

輪廻には、五道輪廻六道輪廻があり、六道

輪廻に含まれる6つの生まれは以下である。

① 天(てん):神々

② 人(じん):人間

③ 阿修羅(あしゅら):悪しき神々

④ 畜生(ちくしょう):牛馬などの動物

⑤ 餓鬼(がき):飢餓などで苦しみ続ける生き物

⑥ 地獄(じごく):ひたすら苦しむ恐ろしい状態

③を覗いたものが、五道輪廻である。

 

端的に言えば、

・善い行いをすれば善業エネルギーに導かれて、

 「天」に生まれ変わる

・悪い行いをすれば悪業エネルギーに導かれて、

 餓鬼道や地獄に落ちる。

 

注:

「天」に生まれたとしても、天にも寿命があり、身心の

衰えはあり、死の恐怖があるので、業が生じ、輪廻が続く。

 

【業の法則1】

・いったん発生してしまった業は自然消滅することはない。

・必ず報いとしてなにがしかの結果をもたらす。

(結果が、いつ現れるかはわからない。百回生まれ変わった

後かも知れない)

 

【業の法則2】

業と、その結果との関係は一回限りである。

(結果が原因となって、その次に別の結果が現れると

いうことはない)

 

=== 釈迦の仏教(小乗仏教) ===

 

善業にせよ悪業にせよ業がある限り輪廻が続く。

よって、輪廻そのものが究極の苦である。

しかし、この世界の因果則は厳然たるもので

変えることができない。

 

そこで、(業の原因となる)煩悩を消すことによって

業のパワーを消して、輪廻を止めることで涅槃を目指す

(つまり、特別な努力をして自分の心のあり方を

変える、ということである)

 

注:涅槃とは、「完全に輪廻を滅した安らぎの境地のこと」である。

 

これが、釈迦が考えた仏教の目的である。

 

なお、輪廻を止めることができるのは「業の法則2」を

前提としている。

 

さらに、この目的を果たすために、釈迦が考えた方法は、

「この世の在り方を正しく理解し、その知識を土台にして

煩悩(苦しみ)を消すために個人的な修行を行うこと」である。

正しく理解することに関係するのが、「五蘊」、「十二処」、「十八界」で、

修行に関係するのが「四諦」、「八正道」である。

 

=== 大乗仏教 ===

 

これに対して、「自分を変えるのではなく、逆に世界の

因果律の方を変えられるようにした」のが大乗仏教である。

 

そのポイントとなるのが、「利他」と「廻向」(えこう)である。

 

釈迦の仏教の場合は、まず自己救済の「自利」があり、

それが回り回って結果的に他者の救済、つまり「利他」に

転ずるという「自利⇒利他」の流れである。

 

これに対して、大乗仏教では、最初から「他利」に目を

向けている。

 

すなわち、最初から人のために身を捧げることを奨励している。

そうした「善行」を日常の中で積んでいけば、出家して仏道修行を

行わなくても悟りに近づけるという考え方である。

 

よって、他者を救った結果として最終的に自分が救われるので、

大乗仏教は「利他⇒自利」の流れとなり、「釈迦の仏教」とは

流れが反対となる。

 

この流れを実現するために、この世で自分がなした善行の

エネルギーは、そのまま輪廻の中で使ってしまうのではなく、

ぐっとため込んでおいて別のほうへ振り向けることが可能だと

考えた。

 

別のほう:

悟りをひらき、ブッダとなって、二度と生まれ変わることのない

涅槃にはいること。

 

このように、本来ならば絶対に転換不可能な原因と結果の

関係にひねりを入れて、望む方向に結果を転向させることを

「廻向」と言う。

このような廻向ができるのは、「空」という概念によって、

それまでの世界のあり方の決まりごとをまぼろしに

してしまったからである。

 

なお、「般若経」では、善行エネルギーを溜めるために、

「般若経を唱えることが最も効果的である」としている。

*****

 

(その10に続く)



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