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フランスの哲学者のことばに、
「近いものは近いものに影響を与えることはできない」
というのがある。
影響を与えるのには、すこし離れていなくてはいけないと
いうのは常識から外れているようだが、案外、真理なのである。
類をもって集まるのが人間の習性だが、同類は反撥することは
あっても、真に引き合うことはむしろ稀である。
近いもの、近すぎるものはいけない。 うるさい。
遠ざけたい心理が働く。 ひかれるよりも、そむきたい心が働く。
人間関係でもっとも近いものは親子である。 子は親から
実に多くのものをうけついでいるけれども、親そっくりに
成長することはもちろんない。 不肖の子の不肖というのは、
親に似ない、だめな子の意であるが、子は不肖がむしろ
普通なのであって、親そっくりの子がいれば、その方がむしろ
異常なのである。
子は知らず知らず、親から離れよう、不肖になろうとしている。
親がわが子を自分と同じような人間に育てようと考えるのは
不毛な努力である。 子にとっても不肖であることによってこそ
生きられ、自分らしさを出すことができる。
親は子を知らない。 子も親を知らない。 互いに遠ざけようと
する無意識の力がはたらいているのだと考えられる。
それに気づかなければ親子ともに不幸である。
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「近いものは近いものに影響を与えることはできない」
考えさせられることばだよね。
自分の子供に勉強を教えようとすると、子供が思ったとおりに
やってくれなくて、感情的になってしまうのは、このことばに
通じるよね。
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