残照日記

晩節を孤芳に生きる。

尖閣ビデオ流出

2010-11-06 08:46:09 | 日記

 【示子弟】  西郷南洲

  才子元来多過事  才子元来多く事を過つ 
  議論畢竟世無功  議論畢竟世に功無し。
  誰知黙黙不言裡  誰か知る黙黙不言の裡
  山是青青花是紅  山は是青青、花は是紅なるを。

∇“尖閣ビデオ流出問題”に関して、国内では、まさに“轟々”たる議論が百沸している。これに対し中国外務省は、<日本側が中国の釣魚島海域で、中国漁船に嫌がらせの行為をしたため衝突が起きた><日本の行為自体が違法。いわゆるビデオ映像でこうした事実の真相を変えることはできず、日本側の行為の違法性は隠せない>とする談話を発表した。ああいえばこう出るふてぶてしい中国との外交交渉は今後どうなるか。政府には上手くやって乗り切って欲しいものだ。幾つか述べておきたいことがある。

【1】先般発生した警察情報の流出に続いて、今回のような国家最高機密情報が、インターネット上に流出したことについては、APECの前であろうが後であろうが、「政府の情報管理能力の徹底的欠如」を指摘されて当然である。世界から「機密性保持のなっていない国」と評価される懸念が生じたのは残念だ。たゞし、この問題が、民主党政権だから、と短絡に問題を摩り替える野党やマスメディアの報道は間違っている。良識ある国民はその尻馬に乗ってはいけない。自民党政権時代から潜在した、日本国全体の危機管理不足こそが問題であることを承知すべきであろう。

【2】<日本の威信を取り戻せ>の連呼は納得できるとしても、そのために<ビデオを全部公開すべきだ>等と、野党特に自民党や石原知事、そして評論家等が叫んでいる。これにはご注意/\! 上述したように、<日本の行為自体が違法>等と、黒を白と言い通すような中国側が、自国防衛のために何を言い出すか分らない。まして、国内不満が爆発寸前まで膨張している中国国民の反日運動が“燎原の火”と化すことは必定だ。そんな事情を余所に、外野席が勝手なことばかり言っている我が国の「政治ショー」化こそ、憂うべき課題である。

∇提案したいことがある。─→与野党の有力政治家、有名新聞・雑誌の論説、そして所謂評論家・識者等が、この問題に対してどう発言したかをしっかり記録に残しておいて欲しい。当時偉そうに的外れだった見解を滔滔と述べていた彼らが、事が終わると、“知らぬ顔の半兵衛”をきめこむのが許せない。孰れの戦略・対応が正しかったかは、かなり遅れて判明するものだ。西郷南洲翁は「議論畢竟(ひっきょう)世に功無し」と迄言った。形式的な犬の遠吠え論争よりも、将来を見据えた誠実な政策を、ということだ。元々議論の正否については「荘子」の喝破したとおりで、どちらが正否かを判定するのは難しいものだ。そこをしっかり踏まえて、少なくとも他人の尻馬に乗る非だけは避けたいものである。

▼<私と君が言い争っているとしよう。君が勝てば私の負け、私が勝てば君が負ける訳だが、果たして勝った方が是で、負けた方が非なのだろうか。真実か否かの絶対的判定者がいないのだから判定できない。仮に第三者がそこに現れて、君の主張に同調したり、又は逆に私に加担したとしよう。それとても単に第三者というもう一人がどちらかと意見を同じくしただけのこと。君と私の考えが同じでかつ第三者が賛成した場合も同様だ。皆が同じ意見だっただけの話。──要するに、何が真実で、正義とは何かという問題は、相対的なもので、その是非は永遠に判定できない。>(「荘子」斉物論)