残照日記

晩節を孤芳に生きる。

吉田茂に学ぶ

2010-11-01 10:11:16 | 日記
<露大統領 極東サハリンに到着 国後島訪問へ──ロシアのメドベージェフ大統領は1日朝、北方領土の国後島訪問に向かうため、極東サハリン州の州都ユジノサハリンスクに到着した。北方領土を訪問すれば旧ソ連時代を含め、ロシア国家元首による訪問は初めて。(11/1 毎日新聞速報)

∇大統領訪問の中止を求めていた日本との関係悪化は必至であろう。 中国とロシア。まさに“前門の虎、後門の狼”である。<日本政府が中止を求めているにもかかわらず、露政府が重ねて訪問の姿勢を見せるのは、外交政策で軸足が定まらない現政権につけ込み、強硬な態度を強めている可能性もある。>(10/31読売新聞) 強硬外交、柳腰持久外交孰れでいくか。又、又、国会や世論が紛糾すること必定である。中ソ両国は、すでに「共産主義国家」ではない。物資的に豊かになり、国民全体がその恩恵を喫したが為に、物質中毒に罹っている強欲資本主義国家である。下手をすれば、他国を侵略してでも国益を守ろうとする。菅政権に「柳腰外交」を真にやり遂げる覚悟があるなら、「軟弱外交」と非難されながも最期まで戦争を回避しようとした幣原喜重郎に学ぶべきだろうし、硬軟合せ演出した吉田茂に学ぶのも現在価値があろうと思う。

∇吉田茂曰く、<貧乏な国、物資の乏しい国でこそ、共産主義は存在し得る制度である。併し物資がある限度以上に乏しくなれば反乱が起こるし、物資が豊かになり、経済が繁栄状態となれば、その国では共産主義は勢力を失ふ。><(中共政策は)貿易を開放し、中共にも繁栄を齎し、「共産制は儲からぬ。自由貿易の方が儲かるぞ」ということを支那の民衆に充分に解らせる方策を取るべきだと思う。──商取引を好む支那人に自由経済のよさを、もう一度充分に味わわせることから考えを出発させるべきだと思う。>と。ソ連に対しては、<終戦の一週間前、日ソ不可侵条約を突然破棄した約束を守らぬ国、条約を無視する国だ、だから威すか、食わすに利を以てするか、この二つ以外にはない>(「大磯随筆」雪華社)要するに、中ソ外交はイデオロギー抗争は無意味で、「経済」をパイプに推進することに徹すべきなのだろう。「くれてやる餌」を政治家・官僚で必死に練ることだ。

∇さて、「バカヤロー解散」で知られるワンマン宰相。引退後も記者が「お元気そうですね。何を召し上がっているのですか」と問われて「ハハ、いつも人を食っているものだからね」とすかさずギャグで反したり、講和条約締結記念にと、自宅に飼っている三匹の犬に、「サン」「フラン」「シスコ」と名づけるなどまさに人を食った吉田だったが、彼に倣い、政府首脳陣が、おど/\せず、毅然とした態度で交渉するには腹芸を身に付けねば。「柳腰外交」を成功させるにもそれは必要だ。しかし、外交の基本は飽くまでも誠実な真剣勝負。吉田曰く、<外交は、小手先の芸でもなければ権謀術数でもない。大局的に着眼して、人類の平和、自由、繁栄に貢献する覚悟を持って主張すべきは主張し、妥協すべきは妥協する。これが真の意味での外交である><外交は命がけの男子一生の大仕事である。ポーツマス条約を結んだ小村寿太郎を見よ。爆弾で隻脚となった重光葵を見よ。外交は命がけということを肝に銘じて忘るなかれ>(「回想10年」中公文庫)と。