くらしのうつわ

信楽焼の窯元に生まれた娘の日記

探し求めて・・・

2011年10月12日 21時00分03秒 | うつわ
信楽セラミック・アート・マーケット2日目の出来事です


「炎の味がまさんですか?」

と声をかけてくださる女性がいました。


よくよくお話を聞いてみると、数年前に信楽のどこかのお店でカップを購入したらしく、どこの窯元かは、分からずにずっと使ってらっしゃいました。

ペアで買ったそのカップ。

つい先日、1つを割ってしまったそう・・・

とても気にいっていたカップだったため、新たにもう1つ欲しくて、残りの1つを持って信楽中のお店を回ったらしいです。

1ヶ月たっても、同じカップは見つかりません。

この陶器祭で、あきらめて新しいカップを購入しようと、また信楽までおいでになりました。

けどやっぱりあきらめきれずに、残り1つのカップを持って陶器祭会場まで。

駅前の会場でそのカップについて尋ねたところ、「これは、炎の味がまさんのカップです。陶芸の森に行ったらブースがあるので、行ってみれば・・・」と言ってもらえたそうです。

そこへ、陶芸の森の炎の味がまブースまで、たどり着かれました。

そして、そのカップを差し出してもらうと、まぎれもなくうちのカップです。

すごく使いこんでいただいたらしく、手触りがぜんぜん違います。

一目で、本当に大切に使っていただいたものだと分かりました。



このカップもまた、ここのご家庭でかわいがっていただけたのだと。

触った瞬間、その家の空気みたいなものが流れてきました。


すごく嬉しかったです。このカップは、そのご家庭でたくさんの空気に触れ、本当にくらしのうつわとして、かわいがっていただいた。

そして、また欲しいとわざわざ1ヶ月もかけて、探し求めて来てくださったこと。

本当にうつわを作ってきて良かったと思いました。

私は毎日、たくさんのうつわ達に囲まれています。

そのぶん、ありがたみや価値が分からないこともあります。

けど、うつわ達が私の手を離れたときから、そのうつわ達の生活が始まるのです。

あたりまえの生活の中からでは、分かっていてもなかなか感じる事は難しいです。


作り手と使い手の距離。繋がった瞬間を目の当たりにしました

うつわが人と人を繋いでくれる。

これからも大切にしていきたい出来事でした。



あいにく、このカップは現在作っていませんが、たとえ1個でも欲しい方がいらっしゃったら、作ります。

当時のようなそっくりそのままには出来ないかも分からないけど、なるべく満足してもらえるようなものを作ります。

そして、出来上がったカップは、またその女性のご家庭に時間をかけて、ゆっくり馴染んでいきますように・・・




本日のくらしのうつわ

イカときゅうりの酢の物