11月23日に中国が、尖閣諸島を含む東シナ海の空域を、進入前に中国への事前通告を必要とする「防空識別圏」に設定した。日本政府は強く抗議し、米国も中国を批判しつつ、日本の実効支配下にある尖閣諸島が日米安保条約の対象地であると、表明した。11月25日には、米軍の戦闘機2機が、中国を試すように、事前通告なしに、識別圏内を飛行した。中国は、これに対する戦闘機の緊急発進をしなかった。尖閣問題で中国と対立することで日米同盟(対米従属)を強化するという、尖閣国有化以来の日本政府の策略が結実したように見えた一瞬だった。
しかし、日本にとって有利な状況は一週間も持たなかった。米国務省は11月29日「米国の民間航空会社が、中国の防空識別圏の設定に従うことを望む」という発表をおこなった。
アメリカの軍部のトップ二人が、中国の「防空識別圏」の設定は正当である。事前通告がなかっただけで、何ら問題がないと米中会談の最中に発言している。中国のメディアは一斉に、アメリカは中国の防空識別圏の設定に理解を示したと報道した。確かに防空識別圏と言うのは各国の都合で設けるもので、この中に勝手に入っても入られても国際法上、不法行為ではない。また、排他的経済水域と異なり、各国の了承を得るような性質のものでもない。この空域があることで、飛行計画を提出している航空機は撃墜される心配がなく、入られる方も事前に飛行計画が提出されている航空機ならわざわざスクランブルをする必要も無い。仮に誤って飛行計画とは異なる航路に入ったとしても、防空識別圏内で引き返せば撃墜されることはない。国籍不明機が領空侵犯をしない様に、一種の緩衝地帯を設けているということらしい。ただ、今回中国が設けた防空識別圏には、抗争中の尖閣諸島が含まれているから、日本側から見ると中国機が侵入すると日本の領空侵犯になってしまい、撃墜することが起こりうるという点だ。
米政府は大企業の言いなりで、米議会も知らない秘密会議で貿易協定の内容が決まるTPPもその象徴だ。米国の連銀や財務省が金融界を救済するためにドルや米国債の過剰発行を続ける量的緩和策もその一つだ。日米と中国の対立は、軍事問題として語られることが多いが、その行方に決定的なのは軍事でなく、経済である。
日本航空と全日空も、中国路線の拡充に力を入れてきたから、中国が識別圏を設定したら2社はすぐ遵守することを決めた。しかしその後、日本政府が2社に要請(事実上命令)して、2社は中国の識別圏を無視することになった。米国は政府より大企業が強いが、日本は官僚独裁だから、大企業より政府が強い。中国に連絡せずに中国に向かって飛ぶ2社の旅客機は、中国の戦闘機に追尾されるかもしれない恐怖を味わうことになる。
日本は戦後ずっと米国傘下の反共産主義の道具であり、米国の意を受けて動く官僚は政治家より上位にあり、隠然とした官僚独裁体制を維持している。
今後、米国の覇権が弱体化する傾向がさらに進むだろうから、米国と言う虎の威を借りるのは、いつはしごを外されるかしれず、危険でさえある。中国が日本に対して強硬姿勢に出たら、米国はどう対応するのか。中国はそのあたりを見極めようとして、日本に売られた喧嘩を倍返ししたようである。
バイデンは中国に圧力などかける気は初めからなかったのであろう。日本に先に立ち寄って、リップサービスをしたことで安倍首相のメンツを少しは考慮したのだろう。中国を怒らせると経済で倍返しの報復を受けることになるアメリカが日本を軍事的に守ることなどあり得るのか?はなはだ疑問である。
日米の密接な連携を強調していた安倍首相は、完璧にコケにされた道化役者のように見える。
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