勝手にお喋りーSanctuaryー

マニアックな趣味のお喋りを勝手につらつらと語っていますー聖域と言うより、隠れ家ー

彼女の立場になって-In her shoes-

2006-06-05 | 映画のお喋り
 『イン ハー シューズ』 2005年 アメリカ
   監督:カーティス・ハンソン 
   出演:キャメロン・ディアス、トニー・コレット、
       シャーリー・マクレーン、マーク・フォイアスタイン

映画には色々な評価がある。
プラス評価としては、「面白い」「痛快」「感動」「心に響く」などがある。
それとは別に、「大切にしたい」と言う評価がある。
人に勧めるのではなく、自分の大切な映画として記憶する。

この映画がまさにそれだった。
余り人には勧めたくない。
まず男性は基本的に面白いとは思わないだろう。
それほど女性の為の映画だ。
しかもどうと言うことのないエピソードを丁寧に積み上げただけのストーリーは、一般受けがよくない。
ドラマティックでもなければ、ラストにサプライズもない。
まさに予想した場所に着地する。

《ストーリー》
幼い頃に母親を失った姉妹(姉ローズ/トニー・コレット・妹マギー/キャメロン・ディアス)は、厳格な父親と理解のない義理の母の元で育った。
二人の性格はまるで正反対。
ローズは切れ者キャリアウーマンの弁護士で、几帳面な真面目人間。
マギーは容姿だけが取柄の、グータラでだらしがないニート。

ある日、恋人と夜を過ごしていたローズは、高校卒業10周年パーティーで酔い潰れたマギーを迎えにいく羽目になった。
実家まで送っていったものの、義理母に追い出されたマギーを仕方なく自分のアパートに連れ帰る。
翌朝マギーと対面した恋人の視線は、彼女のセクシーな肢体に引寄せられる。
(結果は当然・・・)

怒り狂ったローズは二人を叩き出す。
行くところのないマギーは実家の留守を狙って、金品を物色。
そこで父が隠していた、毎年イベントごとに送られてきている、亡き母の両親(祖父母)からのカードを見つける。
マギーは死んだと思っていた祖父母を訪ねるため(寄生するため?)フロリダに旅立つ。

《見所》
映画のタイトルが気になって調べてみた。
靴と言うのは‘立場’を意味してるらしい。
ここから物語りは、このタイトルの通り、「相手の立場に立つ」ことで進んでいく。
恋人の裏切りで事務所を辞めてしまった(職場の上司だったから)ローズは、エリート生活を捨てニートになる。
祖母(シャーリー・マクレーン)から金をせしめようとしていたマギーは、お金が欲しいのなら働けと言われ、老人ケアの施設で働き始める。
新しい環境で、ふたりの頑なな性格が少しずつ変わっていくのがいい。

さらに姉妹の母の死の真相が明らかになり、そこでも互いの立場の違いが浮き彫りになる。
マギーをかばって何も知らせようとせず、ひとりでショックに耐えたローズ。
何も知らされたいなかったために、自分の居場所すらなくしてしまったマギー。

ここで見る側は一つの選択を迫られる。
・どんな辛い事実でも、目を背けずに向かい合った方がいい。
・耐えられないほど辛い真実なら、いっそ何も知らないまま生きていたい。
私は間違いなく前者なので、全編を姉の立場になって見ていた。
姉の目から妹を、妹の目から姉を見ながらストーリーを楽しめる。

だが目隠しをされたままだったマギーには、もう一つのハンディキャップがある。
読書障害なのだ。
(よくはわからないが、字は読めるのに単語を理解して発音するまで、並外れて時間がかかる障害らしい)
このことによって学校で馬鹿にされ、まともな職にも就けなかった。
そしてケア施設で、マギーは引退した大学教授と知り合い、彼から読み方を学ぶことになる。
このことがラストの感動に結びつく。

一方失意の生活を送っていたローズに、新しい職と恋人が見つかる。
だが隠し事を胸に秘めたまま生きてきたローズは、サイモン(マーク・フォイアスタイン)にも自分を曝け出すことができない。
そのことに気付いたサイモンは、ローズの元を去っていく。
傷ついたローズは祖母の手紙(マギーの手帳から住所を調べた)を読み、驚いてフロリダへ。
こうして物語は一気にラストへと向かう。

《余談》-ネタバレ-
マギーの策略でおびき出されたサイモンにローズが告げる言葉。
マギーが大切な場所で朗読した詩。
滅多なことでは泣かない私が、この二つの場面で1滴、2滴・・・。
涙もろい人はあまり泣かないのに、普段泣かない人が泣いてしまう。
多分これはそんな映画だ。
Comments (2)
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