勝手にお喋りーSanctuaryー

マニアックな趣味のお喋りを勝手につらつらと語っていますー聖域と言うより、隠れ家ー

夢と現実、どちらも大切

2006-05-13 | 映画のお喋り
映画三昧週間に突入した。
実は前回4作品の感想が欠けているのだが、とりあえず新しいものから。

 『ブラザーズ・グリム』 2005年・アメリカ映画
    監督:テリー・ギリアム
    出演:マット・デイモン、ヒース・レジャー、モニカ・ベルッチ、ピーター・ストームメア

監督のギリアムについてはまったく知らない。
マット・デイモンの主演作だから見ただけの半可通だ。
とにかくマットが出れば何でも見るので、中身も殆ど知らなかった。
題名から、有名なグリム童話の作者兄弟の話だってことはわかるけど。
『ネバーランド』みたいに、『ピーターパン』が生まれるまでの作者裏話かなと思っていた。
(そういえば『ネバーランド』のレヴューも書いてない。面白かったのに)

イントロは兄弟がまだ幼い頃の話。
妹が病気で寝ているところへ、薬を買うために牛を売りに行ったジェイクが戻ってくる。
母親が「牛は高く売れたかい?」と聞くと、ジェイクは「魔法の豆と交換した」
まんま、『ジャックと豆の木』だ。
御伽噺では、豆から木が育って、巨人の城から見事金のたまごを生むニワトリを奪ってくるのだが・・・現実はそんなもんじゃない。
どうやら妹は薬も買えずに死んでしまうらしい。

残された兄弟、ウィル(マット・デイモン)とジェイク(ヒース・レジャー)は成長し、本筋が始まる。
ちょっと待って!
グリム兄弟はジェイク(ヤーコブ・兄)とウィル(ウィルヘルム・弟)じゃなかったか?
作品中、それが気になって仕方がなかった。
英語では「兄さん」とかがなく、普通に互いの名を呼び合っているが、字幕ではジェイクがウィルに「兄さん」と呼びかけてる。
意図的なのか、字幕間違いなのか・・・。
 
それはともかくとして、二人は有名な「妖怪退治」?専門家と言う設定が面白い。
依頼を受けては出向いていって、奇奇怪怪な出来事の話を聞く。
ジェイクはそれをメモして、ウィルが料金の交渉。
作戦を練り、妖怪退治が始まるのだが・・・。
ここで私はあまりのうそ臭さに爆笑していた。 
当然この二人、詐欺師なのだ。

実際グリム兄弟はドイツ各地を回って、伝承民話を書き止め、それをまとめて本にした。
一般人が文字を書けないのが当たり前の時代では、伝承民話は大切な文化遺産だ。
それを文字に残し、後の時代に伝えるのは立派な仕事。

だがこの映画はその辺を茶化して、と言うか、薬も買えない貧乏な家で育った兄弟が、各地を旅して伝承民話を聞き集めるような資金を持っているはずもない。
「妖怪退治しますよ」って看板で、詐欺をしながら資金集めって言うのは、妙に説得力がある。

さて、上手いこと村人を騙して金を巻き上げ、ジェイクはまた新しい話のネタを仕入れ、意気揚々としていた二人だったが・・・。
この地はその時代フランスの統治下にあり、そのフランスの将軍に捕らえられ、グリム兄弟はある村の事件を解決するよう命じられる。
詐欺を見逃してやる代わりに、ただ働きしろってことだ。

その村では、女の子ばかりが次々とさらわれ・・・。
それが『赤頭巾ちゃん』だったり『ヘンゼルとグレーテル』のグレーテルだったりする。
この辺りから、雲行きが怪しくなって、本物の魔女や狼男の登場となる。
二人は空想に近い民話と現実的な詐欺の世界から、いやいやながら魔法の世界へと足を踏み込まなくてはならなくなる。

この映画のマットは金髪だ。(多分ジェイクと色を変える為に染めた)
その金髪が、この映画のマットをある意味象徴している。
これまでのマットなら、絶対ジェイク役だったと思う。
ジェイクは「魔法の豆」を信じてしまう、空想好きで現実に対処することが出来ない夢見がちな男。
対するウィルは詐欺を計画し、仲間を集め、金儲けをすることが目的の実際的な男。
なんかマットに合わないのだが、見てるうちにウィルもいいかと思った。

「おまえのせいで妹は死んでしまった」
「おまえにはうんざりだ、もう離れたい」
と言うような台詞を吐きながら、民話を集めることが使命だと思い込んでいる夢見がちなジェイクをずっと助けている。
実際ウィルがいなかったら、ジェイクはどこかの空の下で行き倒れになっていたろう。
夢を見ることが出来ない、現実しか頭にないウィルにとって、ある意味ジェイクは羨ましい存在なのだ。

この兄弟の関係は、ラストの山場で生きてくる。
ドイツの暗い森の中にそびえ立つ塔。
そこに住む孤独な乙女は『ラプンツェル』を思わせる。
だが本当は鏡に映る自分のことしか興味のない女王。
「鏡よ、世界で一番美しいのは私に決まってるわよね?」
そう、『白雪姫』の魔女(モニカ・ベルッチ)なのだ。

この魔女に剣を突きたてられると、男は例外なく彼女の僕になってしまう。
彼女の目的を阻止しようと乗り込んだ兄弟も、この罠に落ちかける。
そこでウィルが・・・。

やっぱりこの先は言えない。
かなりグロなシーンもあるが、この映画のユーモアは好きだ。
決してファンタジーではない。
決して冒険アクションストーリーではない。
グリム兄弟はまったくの無力で、魔法の力に対抗する術もない。

だからこそ笑えるのだ。
どっちもどっちの兄弟の、ケンカしながらも仲がいいやり取り。
散りばめられた細かなギャグ。
単純に笑いたい人には決してお勧めできない種類のユーモア。

久しぶりにたっぷりと笑った映画だった。
Comments (4)
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