「こうしたい」と「つくる」の間に 一級建築士事務所アーク・ライフのブログ

東京都町田市の一級建築士事務所アーク・ライフです。住まい手の「こうしたい」と「つくる」の間で要望を共有し一緒に考えます。

町田の断熱耐震改修工事 屋根断熱の作業を始めました

2020-07-27 21:03:30 | お知らせ


東京の町田市の断熱耐震改修工事の現場で、屋根断熱の作業を始めました。

今回の工事の目的は築50年の住宅にあと30年住めるようにするための改修です。
断熱性能と耐震性能を向上させ、長期間にわたって安心して住めるようにします。

断熱改修は北海道で行われているようにきちんと行うことで、室内で過ごしやすくなり、同時に建物自体の耐久性も向上させることができます。

断熱改修の際の性能確保と耐久性向上のポイントは連続です。
断熱材と、防湿気密シート、防水層をきちんと連続させることがきちんとした断熱改修につながります。

通常、新築の時には防湿気密シートを柱の室内側の面で連続させますが、今回は改修です。2階床、間仕切壁、電線などがある中でどうやって気密と断熱を連続させるかというのが設計の時の悩みでした。電気配線、耐震補強部材、構造部材が入り組んでいる中でそれに室内側で防湿気密を連続させるのはかなり難しいと感じていました。

その悩みを解消してくれたのは北海道の知恵でした。
北国にふさわしい温熱環境要件を備えた住宅等の普及をはかるため、北海道が独自に創設した資格制度のBIS(Building Insulation Specialistの略語)のテキスト「北の住まいの熱環境計画」に、外装材を撤去して柱などの軸組の外側で気密補強を行う方法が書かれています。

柱などの軸組の外側で防湿気密をして、その外側に断熱材を設置する外張り断熱改修を行うことで、既存住宅でも防湿気密シートと断熱材を連続させることが可能になります。屋根は既存屋根を剥がして、支えの板材の外側に防湿気密シートを設置してその上に断熱材を設置するという手順になります。

シンプルな方法ですが、元ある屋根を剥がしてから防湿気密シート、断熱材、新しい屋根と作っていくのも簡単ではありません。屋根は雨水が建物に入らないようにする傘のようなものなので、それを剥がすということは、雨に対して無防備な状態をつくることになります。その際に雨で建物を濡らさないような配慮が必要です。

改修工事の最中に雨で建物を濡らさないようにテクトハウジングのS棟梁が方針を考えてくれました。その方針とは、雨に対して無防備な部分を最小限に抑えながら進めていく。具体的にはまずは2階の屋根、次に1階の屋根をというふうに屋根の断熱工事を先に済ませて、新しい屋根まで葺いてしまいます。新しい屋根にある程度守られる状態をつくってから、外壁の断熱工事を行うというものです。



7月24日の連休二日目、まずは2階屋根の解体の作業です。
屋根葺き材を下ろし、軒の出っ張っている部分をカットします。この家の2階の屋根は鉄骨トラスで支えられていたのですが、その軒先もカットします。



その後耐震補強のための、合板を屋根の下地面に張ります。12mmの構造用合板を2枚張りして、継ぎ目には釘を密に打ちます。定規をつくり75mm間隔に綺麗に釘打ちしてくれました。


この日はこれで作業完了。雨養生のため、透湿防水シートのタイベックを貼りました。
雨養生用のブルーシートも用意しましたが、ブルーシートの掛け払いの間に防湿気密シートを貼るタイミングを逃さないよう、タイベック捨て貼りをして養生としました。多少もったいないですが、次の工程では晴れ間をついてこの上から間髪を入れず防湿気密シートを貼ることが出来ました。


連休明けの今日、捨て貼りのタイベックの上から厚手の防湿気密シートを貼り、継ぎ目はテープ止めしました。
ツーバイ材の断熱材設置用の下地を設置して、断熱材充填に備えます。

断熱材の設置は梅雨明け後にすることにして、一旦雨養生のブルーシートをかけて外部の作業は中断です。
明日以降、室内の作業に入っていきます。



室内は連休中に暖房設備屋さんのOさんが入り北海道式のシンプルな床下暖房配管を施工してくれました。
また、トイレや洗面、浴室などの水回りの配管の設置も完了です。

あと30年安心して住むための断熱耐震改修工事。
テクトハウジングのS棟梁は、天候や様々な具合を見ながら、その都度臨機応変に工程を組みなおして着実に進めてくれています。

町田の断熱改修工事 土間上の断熱材施工

2020-07-21 00:09:03 | リノベーション
町田の断熱改修工事 
床下に断熱材を敷きこむ日でした





清掃した土間コンクリートの上にホウ酸系の防蟻剤をしみ込ませた断熱材を敷きこんでいきます。
既存の床下地をある程度残しながらなので小さめにカットした断熱材を敷き、継ぎ手は気密テープで処理します。
床下地にもホウ酸系の防蟻剤を塗布して耐久性に配慮しています。

久しぶりの暑い日になりましたが、大工さん達は暑い中黙々と頑張ってくれていました。

町田の断熱耐震改修工事 床下確認

2020-07-17 23:33:07 | リノベーション
町田の断熱耐震改修 今日はすべての1階床の解体が終わり、床下の状況をお客様に確認していただく日でした

当初は1階床を一部解体し、解体しない部分は潜って掃除、断熱作業、暖房機器設置と考えていましたが、思った以上に床下の高さが低く、作業ができないことや、劣化点検をちゃんとしたほうがいいことから1階床全部を解体することになりました。

1階床をすべて解体し、様子を確認してみると、潜って掃除、劣化状況の確認、断熱作業、暖房機器設置はほとんど不可能なことに気が付きます。むしろ、はじめから無理筋だったといえるかもしれません。床を剥がして、無理のない姿勢で作業ができる状態にすることで、ちゃんとした仕事が可能になります。

清掃前の状況
調湿材が低い床下に敷き詰めてあります


清掃後の状況
調湿材や木くず、砂埃等をすべて撤去しました



一部、床下が土の部分もありましたが、厚手の防湿シートを敷きます。
防湿シートを敷くと、シートの下にうっすらと水滴がつき、シートが土からの水分を防いでくれていることがわかります



他にもお客様と電気関係、設備関係、仕上げについての打ち合わせを行いました。

着工して約3週間が経とうとしていますが、きちんとした下準備をするとなかなか断熱材そのものの施工ににたどり着きません。
それでも、お客さまには現場を見て「進んできましたね」と言っていただき、断熱材が設置されるのを楽しみにされている様子でした。
期待にこたえられるように、取り組んでいきます。

町田の断熱耐震改修工事

2020-07-15 17:09:03 | リノベーション
町田の断熱耐震改修工事の現場で、大工さんが頑張ってくれています。
今は、断熱と耐震補強をするための下ごしらえの段階で、屋根を室内側から補強したり、1階床を解体したりしています。

この断熱耐震改修では、確実に気密性能と断熱性能を確保するために、既存建物の外側を気密シートと断熱材ですっぽりくるむ計画です。





屋根は既存の野地板の上に34cm厚さのグラスウール断熱材を入れ、その上からさらに屋根をかぶせます。
その分の重さを支えられるように、元の小屋組みを補強しました。
大工さんが綺麗に小屋組みの補強をしてくれたので、このまま天井を張って隠してしまうのはもったいないくらいです。
お客さんに小屋組みを見せる提案をしてみようかと思っています。



1階床の解体も進んでいます。
土間コンクリートが元から敷いてある場所はきちんと掃除機をかけて綺麗な状態にしてくれました。



一部土が露出している部分は土からの湿気が上がってこないよう厚手の気密シートで防湿措置も行いました。
重ねを10cm確保してテープ止めもちゃんとしてあります。
シートもよれずに敷いてあり、きちんと土からの湿気を遮断できそうです。
いい仕事をしてくれています。

基礎や束石との取り合いは、断熱材を敷いてから防蟻シールで隙間を塞ぐことにします。

1階の床を全部剥がした状態をお客さん、テクトハウジングのS棟梁、監理者である私の3者で共有し、劣化部分はないか、床下に悪いところはないか、綺麗に清掃できているかを確認します。
その後断熱材の敷き込みなど次の工程に入ります。

着工してから約2週間、現場としては下ごしらえの時期ですが、着実に進んでいます。
想定と違っていたりして、図面通りにはならない部分もありますが、現場でS棟梁とよく相談しながら対処しています。
わからない部分は北海道の建築家、山本亜耕さんに相談し、実績のある確実な方法を教えていただくことで、自信をもってスムーズに進めることができています。

町田の家の断熱耐震改修工事

2020-06-29 18:51:45 | お知らせ


今回、断熱改修工事が始まった現場は、東京都町田市の私鉄沿線に開発された分譲住宅地にあります。

この計画は、築50年の住宅にあと30年は安心して住みたいというお客さんの要望から始まりました。
あと30年経つと、2050年頃です。2050年までお客さんが安心して住むためには、本格的な断熱改修を行う必要があると考えました。

しかし、どうすれば新築以上の性能を持つ断熱改修ができるのか、実現の道筋がなかなか立てられませんでした。そんな中、今回施工を担当していただいているテクトハウジングさんのS棟梁と一緒に、断熱改修を含む性能向上リフォームが多く行われている北海道に視察に行こうという話になりました。

北海道の視察では現地の建築家、山本亜耕さんに実際に断熱改修の現場を見せていただいたり、様々なノウハウを教えていただいたことが推進力となり、今回の着工につながりました。他にもテクトハウジングさんと協働で、断熱リフォームのワークショップを開催したりして、今回の現場に向けて着実に準備を進めてきました。



いざ着工ということで、現場を確認し打合せをしてきました。まずは柱建てのバルコニーやテラスを撤去し、基礎まわりの地面を掘り始めます。基礎に防蟻EPS(シロアリ対策としてホウ酸をしみ込ませた発泡スチロールの断熱材)を張り、基礎断熱とするためです。追加のシロアリ対策として、防蟻EPS断熱材の上端にガルバリウム鋼板を曲げて作った蟻返しを設けます。



蟻返しは板金屋さんに加工、設置してもらいますが、その形状について板金屋さんと現場打ち合わせ。
「この形状にするためには、~~しようと考えている」と板金屋さん、
「それだと大変で精度も出にくいので、こうしたらどうでしょうか?、でも~~なってしまうのは何とかしたい」と高本
「そしたら~~したらどうですか?」
などなどS棟梁を交え3者で、最終的に欲しいものと、それをどう実現するかについて打合せ。
最終的に既存の基礎の精度を吸収しながら、施工もうまくいき、欲しい機能も達成できる納め方に着地することができました。

改修工事では、どれだけ事前に想定して図面を描いても、工場生産のものを現場で組み立てるというわけにはいきません。現場の状況に合わせながら、最大限機能を発揮するためには、現場で作業する職人さんとのキャッチボールが欠かせないのです。素晴らしく力量のある職人さんと、その方々を束ねるS棟梁に助けてもらいながら、お客様が安心して暮らせるために、この断熱改修工事を進めていきたいと思います。