温泉は楽しい。

久しぶりに温泉に行きました。
お隣の県にある大きな公園に隣接した公設の温泉。大広間があって、カラオケをがんがん歌っている田舎の温泉。
ほんとだったら山の中にあるひっそりとした雰囲気のある温泉や、海の音を聞きながらゆっくりとお昼寝できるような隠れ家温泉なんかへ行きたいところですが、非常に厳しいお財布事情から、入浴料100円割引券をプリントアウトしてクルマで40分ほどのコチラへ。

入場料700円（割引券を使って600円！）ながらも、大浴場（気泡浴、圧注浴）、露天風呂、薬湯、サウナとひととおりのお風呂があり、さらに水着着用のバーデゾーンやマッサージ、床屋さん（！）などもあるようです。
普段は地元の人で賑わっている様子の温泉も、田植えシーズンのせいか、どこか遠くにある観光地の温泉へ行っているのか、そもそも12時にチェックインという時間帯のせいか大浴場は貸切状態でしたよ。
腰が折れ曲がり背骨がきれいに浮き出したおばあちゃん、白くてふくよかな上半身をどうやって支えているのかと思うほど細い足のおばさん、サウナから飛び出してざぶんと水風呂に入るおばさん。のんびりと気泡を浴びながら、人間観察するのも温泉の楽しいところ。
さて、圧注浴で背中を念入りに揉み解した後、露天風呂へと移動しました。

最初、露天風呂には誰もおらず暖かな陽射しを浴びてのんびりとお湯に浸かりました。よく見るとお湯の上には花びらや葉っぱに混じって小さな虫もありましたが、気にしない気にしない（笑）。
昼間のお風呂は、なんとなく昔を思い出させる効能があるようです。
5年ほど前にやっぱり昼間の温泉に入ったことを思い出し、その間に起こったような起こらなかったようなささやかな事をまた思い出しました。
風は吹き、ものは流れ、体は齢を取っても私は相変わらずに温泉に入り迷っている。
ぼけっとお湯の中で途方に暮れていると、ちゃぷちゃぷと心地よい音が聴こえ、いつの間にかおばさん二人が露天風呂に入っていました。
見ず知らずの人の前で、とても無防備な背中を見せていたなぁと少し恥ずかしくなり、薬湯へ移動。

薬湯には「高麗人参」と書かれた札が下がっていて、学校のプールの消毒漕の匂いがしました。
丸い浴槽には、すぐ隣に植えられたもみじの花がたくさん浮かんでいて、さわさわと吹く風に乗って次から次へとまた飛んできました。
先客は二人。どちらも常連さんのようでしたが、「水曜日は休みだけど、連休中は営業しているらしい」とか「今日はあまり汚れてないから、昨日の晩にでも掃除をしたのかもしれない」とかどうでもいいようなことを話していました。
以前この薬湯で、おばさま4人組と遭遇したことがあり、このおばさま達の強烈なおしゃべり（話題は主に家庭内の嫁・姑抗争と夫の愚痴）が楽しくてなかなかお湯から上がれなかったことを思い出しました。
今日は以前ほどの収穫はないなぁ、とサウナへ移動。

サウナにはまだ若い（と言っても40代前半かな）女性がひとり、たらたらと全身から汗を流していました。
じっと座っていると、薬湯にいたおばさんが入ってきて、「あれ、いたの～？」と若い女性に話しかけました。おばさんと女性に挟まれた格好の私は、二人のおしゃべりを聞くことに（えへへ、聞く気満々ですよ）。

狭いサウナの中、二人の会話を聞いていると、おばさんは日本在住の台湾人で、現在は農業を手伝っているほかになんらかの商売を営んでいる様子。少し前に台湾へ帰り、烏龍茶を大量に買ってきたとかお茶は烏龍茶に限るとか日本茶はどうしても馴染めないとか。
このおばさんのお話がとっても可愛いの。
薬湯で、他のおばさんとしゃべっているときはぶっきらぼうにぽつりぽつりと話すだけだったのに、サウナでしゃべりだすと日本語が崩れていくのね。
台湾の言葉に近い訛りなんでしょうね、ゆるゆると日本語が怪しくなってイントネーションが可笑しくなっていくのね。カワイイんだわ。
おばさんは、この女の人のことを信頼しているんだなってのが伝わってきて、サウナの中でだらだらと汗を流しながら、ふふふふと口元を緩めてしまう。
できればずっと聞いていたかったけど、いい加減ふやけてきたのでサウナを後にしました。

大浴場でぬるぬるとお湯に浸っていると、先ほどのおばさんもサウナから出てきました。
そこへ入ってきたおばさん二人組と遭遇し、お互いに満面の笑みをたたえて「は～い！」とハイタッチ。
そうか、おばさんはこの地にどっしりと腰を据えて生活を楽しんでいるんだな、っと勝手に想像してにやにや。
温泉の楽しみは、お湯だけじゃなくそこに集まる人にこそあるんだわ、となんちゃって温泉マニアのタワゴトでした。