Daily Bubble

映画や歌舞伎、音楽などのアブクを残すアクアの日記。のんびりモードで更新中。

『テルミン』

2005-02-17 23:59:59 | cinema
映画『テルミン』を観た。
手を触れずに演奏する電子楽器「テルミン」を発明したレフ・セルゲイヴィッチ・テルミン博士を追ったドキュメンタリー。
ロシアで1920年にテルミンを発明したテルミン博士、アメリカ公演でオーケストラと演奏し大成功を修める。若くてブルーの瞳で自信に溢れ光り輝いている。
側には、まだ19歳のテルミニスト・クララが丸い可愛い顔で微笑んでいる。
この頃のテルミン博士はほんとにステキです。当時としては異例の黒人女性との結婚、というエピソードにもそそられる。

しかし、時代は冷戦のど真ん中。
ある日、ロシア人にさらわれ、長い間KGBに囚われてしまう。その後もソ連でのおそらく辛く厳しいであろう生活…。アメリカの友人たちも博士の生死すら確認できなかった。
何十年もの時を経て現れるテルミン博士は、顔には深い皺、丸く曲がった肩、よれよれの洋服。以前のステキなテルミン博士の面影は褪せていて、ひどく切ない気持ちになりました。
でも、なぜかここからの方が映画は面白くなる。
ふと思い出したのは、『ブエナ☆ビスタ☆ソシアルクラブ』のコンパイ爺さん。
まるでタイプは違う二人だけど、それぞれ国の事情により西側諸国(懐かしい響きだ…)と大きく引き離されたところは同じ。
再び、アメリカを歩くテルミン博士のまるでフィクションのような佇まいは、『ブエナ☆ビスタ』と同様のドキュメンタリーの持つ強い力を感じた。

ラストには、いつのまにか涙が伝った。
なんて言えばいいのかわからないけれど、今の私の小さな人生ではまだ体験できない、大きな大きな愛のようなものを感じたのかもしれない。
クララがテルミン博士を前にして、初期のテルミンを「愛しいテルミン」と言うシーン、すっごくドキドキして嬉しかった。