川べのお茶

旧ブログから引っ越ししました。
仕事のこと、暮らしのこと、時々ぼやき(?)

御殿場散歩

2018-10-13 | 取材
我が家の日曜BSの定番「百年名家」にまたも(社長が)触発され、
御殿場へプチトリップ。
(インター付近のアウトレット渋滞が凄かった!)




茅葺の山門から美しい竹林のアプローチを進みます。

その先の雑木林を抜け、ぱっと視界が広がると、


ゆったりとした車寄せの向こうに、
そっけないほどすっきりとした邸宅が現れます。


1960年代安保闘争の時代、首相を務めた
岸信介の別邸です。
(岸家長女は安倍現首相のお母様)
(幼いころの安倍サンも遊びにきたのかしら)
設計は近代数寄屋の第一人者といわれる、吉田五十八(いそや)。
施工はこれも業界では名高い、水澤工務店。
(こちらの会社は坪ン百万以下の依頼は受けないとか
築約50年ほどの、吉田五十八の晩年の名作と言われています。

庭側からの風景。
左から、茶室・居間・食堂。

  東山旧岸邸・HPよりお借りしました

建物は、ただもう「端正」の一言。
無駄な線というものが一つもなく、
ぎりぎりまで引き絞った「引き算」の建物という印象です。
それでいて緊張させられることは無く、
ゆったりとくつろげる、
豊かな空気が流れているように思いました。
さる著名な外国の建築関係の方が
「エクセレント・・」と呟いたというエピソードも頷けます。


そして各室から眺める、庭園の見事なこと。
それも
床に、ソファに、食堂の椅子に座った時、
それぞれ一番美しく景色が映えるよう、
開口を吟味しているそうです。


居間から、ソファ目線です(余計なヒトが入ってる 笑)
テーブルに映り込む景色も計算済み。すごい。
もちろん家具も設計してます。



こちらは食堂の大テーブル越しから。
中央のモミジの奥には小川が流れ、
さらさらと音も楽しみます。


庭に向う大開口の建具部は、

雨戸・網戸・サッシ・障子、すべて引き込みできます。
(結果、この枠部分のブ厚いこと!)

ちなみにこのサッシ、
設計事務所物件でよく採用する木製サッシではなく、
なんとアルミサッシです。
冬は寒さ厳しい土地柄を踏まえてなのでしょうか、
工業製品も積極的に取り入れる姿勢は、
僭越ですが「若々しい感性だなあ」と思いました。
(壁にも一部、塩ビクロスが使われていました)
ただ当時はアルミサッシは出だしの頃、
生地のままのいわゆる「アルミ色」しかなかったところを
設計者がメーカーに特注色として作らさせたとか。
これ、現在の「ブロンズ色」の最初だそうです。
(ただのアルミサッシじゃない、さすがだ・・)


そうしてこの建具。

食堂の壁沿い、カトラリー入れとして使用されていたそうですが、
(右の格子部には空調設備が隠されています)
この納まりを見て下さい。

(職員さんに開けて見せて頂きました)


窓枠・障子の桟など全て面取り、あくまですっきりと見せています。

(うまく写せなかったのですが、巾木まで面取りしてましたよ・・)


・・・圧巻。
社長と二人、
ただただ唸っておりました。

そして建築自体ももちろんですが、
その維持管理も素晴らしい。
大開口の引戸の滑らかな納まり、
狂いの無い建具、無垢の床板。
携わった職人の技術もさることながら、
丁寧に手を入れてきた軌跡が判るような、
家に対する「愛情」を感じさせる建物でした。





ここは現在、和菓子の「虎屋」さんが維持管理されています。
同じ敷地内には「とらや工房」として和カフェがあり、
シゲキされた頭を休めようかと思ったら、

この行列!
和菓子とお茶のセットの為に
2時間待つ情熱はございませんでした・・・。
(この建物も「都市景観賞」受賞作です)



利休さん?に見送られつつ、
次の場所へ。



東山・旧岸邸HP → 

コメント
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