ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

クリストファー・プリースト【魔法 The glamour】

2013-10-05 | 早川書房

新作『夢幻諸島から』が出ていることに気づいた時、ああ、まだ読んでなかったなと思いだして、遅ればせながら手にした1冊。
それを言ったらば『双生児』もまだなんだけれど。

【魔法 The glamour】clickでAmazonへ。
 魔法 The glamour

 著者:クリストファー・プリースト
 訳者:古沢嘉通
 発行:早川書房
 Amazonで詳細をみる


車いすに乗った状態で登場する主人公グレイ。
彼は事故による大怪我で入院中で、記憶の一部も失っていることがわかります。
自分自身の状態に苛立っているグレイの前に表れたのは、彼の恋人であったという女性スーザン。
彼女の登場とともに、グレイは記憶を取り戻していったかにみえましたが…という物語。

腕利きの報道カメラマンだったグレイはその休暇旅行中に、スーザンと出会い、恋に落ちます。
はじめのほうは、その出会ったばかりの恋人達の旅が描かれますが、そこに常にさしているのはもうひとりの男性の色濃い影。
グレイとスーザン、そして姿を見せない男・ナイオールの三角関係です。
これが普通の三角関係ならば、恋愛小説なのでしょうけれど、そうは問屋がおろさない。
妙な感じが漂い続けています。

真相はどこにあるのか。
おかしい、何かがおかしいと思いつづけながら読んでいるのに、その予想の上をいかれました。
ものすごいヤラレタ感と、ものすごい気持ちの悪さです。
これは気持ち悪い。そして怖い。
読み終えてみると、表紙すら気持ち悪い。
二重三重の気持ち悪さとともに読了。
この気持ち悪さ、誰かに言いたいけれど、言ったら、この本を読む楽しみがなくなってしまうから言えないのです。
読んでほしいと思うのに、どうおススメしてよいものやら。
タイトルすら説明しては興ざめなのに。
ああ、でも、こんなふうに書くと過剰な期待させてしまうのかもしれないし。

というわけで、この本の紹介文を引用しておきます。
『爆弾テロに巻きこまれ、記憶を失った報道カメラマンのグレイ。彼のもとへ、かつての恋人を名乗るスーザンが訪ねてきた。彼女との再会をきっかけに、グレイは徐々に記憶を取り戻したかに思われたのだが…南仏とイギリスを舞台に展開するラブ・ストーリーは、穏やかな幕開けから一転、読者の眼前にめくるめく驚愕の異世界を現出させる!奇才プリーストが語り(=騙り)の技巧を遺憾なく発揮して描いた珠玉の幻想小説。 』
幻想というより、いっそホラーといいたい気分の1冊でした。
怖いわー。






コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 小川糸【喋々喃々】 | トップ | ゲキ×シネ『シレンとラギ』を... »

コメントを投稿

早川書房」カテゴリの最新記事