タイトルと表紙買いの1冊。
ちゃんとみてみれば、著者はオリヴァー・サックス。それならば、内容的には私にとってははずれなしです。
音楽嗜好症
脳神経科医と音楽に憑かれた人々
著者:オリヴァー・サックス
発行:早川書房
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頭の中で音楽が鳴り響くなどといえば聴こえは良いですが、単なるイメージや比喩でも、幻聴でもないのに、音源なしに実際に音楽を聴いた時と同様に神経が活動しているという不気味さ。
それが自分にはコントロールできないとなったら、どれほどのストレスでしょうか。
もはや、音楽に親しむというレベルではありません。
でも、そういった難儀な状況に見舞われた患者さんたちの前向きなこと。
迷惑至極であり、とても辛いのに、他の人にはわかってもらいにくい状況であっても、それに慣れ、克服しようとしていくのです。果ては、その頭の中の音楽を友とまでするとは。
様々な例が、有名な音楽家たちや文学作品の中からもとりあげられるところから始まり、絶対音感、共感覚(音に色を感じたり、味を感じたりする。音を聴いた時に別の部分の脳も活動してしまうというもの。)を持つ人たちのこと、音楽サヴァンの人たちのことなどにも範囲は広がっていきます。
脳神経の障害により、かつての自分を失ってしまった人や、ごくわずかな時間しか現在のことを記憶することができなくなってしまった人(『博士の愛した数式』の博士がそうでした。)が、音楽とともにある時にだけ、かつての自分を取り戻すことができることも印象深いもの。
もちろん、彼らが職業的に音楽をとても近くにおいていたという事実はありますが、自閉症であったり、精神疾患のある人たちにも、音楽によって、コミュニケーションが得られるといった例もありました。
音楽がいかに人間という生き物の根深い場所につながっているかを感じる内容です。
普段、音楽を聴いている時には、その音楽によって引き起こされる感情や気分のほうに気がとられてしまいますし、そういった部分が患者さんたちの記憶を揺さぶる、と思いたいところもあります。強い感情とともにあった音楽が、何かを呼び覚ますと。
でも、それよりも、音楽はとても規則的に時間を経過させる仕組みであり、技術であるという側面のほうを強く感じてしまいます。
実は感情を伴わずとも、奏でられる音楽は、聴く側にある一定の情感を呼び覚ます。
それもりっぱなコミュニケーションであるわけです。
なんだか、せつないような気もしますが。
著者は映画『レナードの朝』の原案となった本を書いた人で他に『妻と帽子を間違えた男』という本も有名です。
著者の他の本がおもしろかった方や、V・S・ラマチャンドランの『脳のなかの幽霊』を興味深く読まれた方にはお薦めかと思います。
私はおもしろかったです。
覚えていられるわけではないけど。
ただし、常に音楽が聞こえているという状況は…うーむ、現実のあなたの生活も似たようなものでしょ、と誰かさんに言われそうです(^o^)/
いや、寝ているときはサイレント・モードなのですが(^o^)/
すごい。まるで読み終えた後のようなコメントです。それなのにおすすめするのも何ですが、機会がありましたらぜひ(^^)