ラマ・ケツン・サンポという文字の雰囲気も音も、なんだかどこか愛らしいような名前を初めて知ったのは、「蜜の流れる博士」だったか、それとも別の本だったか。
いずれにしても、著者の本を読み始めの頃。その頃は、チベット仏教が著者の著作のなかでも大きな割合を占めていたと思います。
今、思いかえしても、さっぱりわからなかったということしか思い出せない「虹の階梯」とか。
ま、それはさておき、チベット仏教の名僧ラマ・ケツン・サンポ先生の自伝の文庫化です。
チベットの先生
著者:中沢新一
発行:KADOKAWA/角川学芸出版
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見るなり手にしてしまった自分を棚上げしていうのもなんですが、よく文庫化されたものだと思います。
とてもマイナーな気がします。
でも、それでこその、学芸出版ですね。
仏教の教えが尊ばれる環境の中で、少年時代から続けられる仏教の勉強と密教の修行の数々。
印象的なのは優れた先人、師たちとの出会い、そして何よりケツン・サンポ少年の熱心で、素直で、開かれた学びの姿勢です。
きっと、どの師にとっても、すんなりと成長していく若芽をみるような喜びがあっただろうと思います。
我欲を捨て、感謝の念で心を観た師、世界を満たす生命と同化するということ。
それができたらすばらしいと、素直に思えるようなことです。
けれども、ただそれだけを求め、学びと修行を究めて生きることが難しいのは、この本が教えてくれえます。
美しい仏教の教えを伝え続けたチベットという国の受難。
いろいろと思うところの多い1冊でした。
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