ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

ゲキ×シネ『髑髏城の七人』を観てきました。

2013-01-14 | 観るものにまつわる日々のあれこれ
 
劇団☆新感線の代表作のひとつ『髑髏城の七人』。

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 髑髏城の七人 ワカドクロ
 脚本:中島かずき
 演出:いのうえひでのり
 出演:小栗旬 森山未来 早乙女太一 小池栄子 仲里衣紗

時に天正十八年、織田信長が倒れはや八年。
天下統一は豊臣秀吉の手でなされようとしていた。唯一関東を除いては。
黒甲冑身を包んだ武装集団“関東髑髏党”の首魁、自らを“天魔王”と名乗る仮面の魔人とその拠城―“髑髏城”。
彼らの支配下にある関東平野に、奇しき縁にあやつられるかのように集まる者たちがいた─。


物語は今は亡き信長に仕えた玉ころがしの捨之介、無界屋蘭兵衛、天魔王の3人の関係の上に成り立っています。
蘭兵衛は森蘭丸、捨之介と天魔王は信長の影武者であったというのが元々の設定。
信長の無念、天魔の御霊だと言って天下を狙う天魔王、信長と共に死ねなかったことを悔やむ蘭兵衛、「浮世の憂さは三途の川へ捨之介」とうそぶく捨之介は三者三様の信長への思いを秘めています。
天魔王の暴走を捨之介、蘭兵衛が止めようとするというのが大筋。
そこへ、それぞれ天魔王に恨みを持つことになる人々が絡んで物語は進んでいきます。その中には家康も。
捨之介と天魔王の二役を演じたのはアカドクロと呼ばれるバージョンでは古田新太さん、アオドクロでは市川染五郎さん。
主役はなんといっても捨之介。

今回はそのキャストを一新、若手を揃えての公演を撮影したゲキ×シネ10作目。
アカドクロ、アオドクロにちなんで、ワカドクロと呼ばれるバージョンです。
その若さを反映してか、捨之介と天魔王が信長の影武者であったという設定がなくしています。
キャストは捨之介に小栗旬さん、天魔王は森山未来さん、蘭兵衛に早乙女太一さん。
作品としては劇団☆新感線のいつもの遊びの部分がなりを潜め、印象としてはオーソドックス。物語もぎゅっと3人の関係がクローズアップされています。

さすがにワカドクロというだけあって若い。とにかく若い。
蘭兵衛の早乙女太一さんはさすがに動けば綺麗、天魔王の森山未来さんもがっつり作りこんでみせてくれますが、どうにも捨之介の小栗旬さんが…。
立ち姿はすっきり、着流しもそれなりにすてきですが、「浮世の憂さは三途の川へ捨之介」、「玉ころがしの捨之介」というあたりの酸いも甘いも噛み分けた役の魅力が足りないのですよねえ、これが。
いっそ、すっぱりそこはは捨てるつもりになって、まるっきり別の作りをめざせば違ったのでしょうけれど、そのあたりがハンパな印象で、観ていて恥ずかしくなってしまいます。
今回の捨之介で最も良いと思ったのは最も余裕のないセリフを言った場面だったというくらい。それはとりもなおさず気持ちの勢いをそのまま言葉にする場面だったということです。
言っても詮無いことですが、むしろ、蘭兵衛だったほうがはまったかも。

全体的に、若いことが最大の魅力である半面、「若いねぇ」が「まだまだだねぇ」になってしまった感じがします。
たぶん、若い3人の物語としてみようとすると、捨之介という役がもっているある種の達観が邪魔になるのだと思います。
だから、3人のバランスが悪い(天魔王の熱演が痛々しいほどで…。)。
でも、それがないと捨之介の魅力って半減なんですよねー。
加えて、捨之介を形作っていた大きな要素である「影武者」という部分がない。
そうすると、捨之介と、メインの登場人物のひとりである沙霧の、影武者として生きてきた者と影武者の存在に守られて生きてきた者という対比がなくなって、ふたりのつながりが薄くなってしまいます。
この関係は、後半、髑髏城に捕えられた捨之介を助けに行く原動力となる沙霧という女の子の強い動機のひとつなのですが、それがないと恋心がメインになってしまうのです。
それなのに、そこを補うほどの魅力がこの捨之介には感じられないのは致命的。
この点では、二役がいらなくなったことでの物語の改変が足りない部分なのだと思います。
元々の『髑髏城の七人』、アカドクロ、アオドクロを観てから観ると、変わっている部分から察したり、以前の物語から補ったりで、それなりに頭の中で作ってしまいますが、ところどころエピソードが足りないんだな、きっと。
もちろん、それぞれのキャストなりの魅力がありますし、おお、こういうふうに変えてきたのか~と、楽しめるところも多いのですけれどもね。
捨之介と天魔王の変化によって、元々の作品にあった群像劇としてのバランスがくずれた感じは否めません。
撮り方もあまり好きになれなかったし。

…単純に、古田新太の捨之助のかっこよさを超える個人的な見どころを見つけられなかっただけなのかもしれません。
巷では、捨之介ががばっと脚を開いて刀を構えた時の、着物の裾のはだけ具合やふとももが…という話もあるようですが、そもそも、その時の形の決まり具合がかっこよくない。
古田さんや染五郎はもっとかっこよかったのにと、観ているそばから思ってしまいましたもの。
まあ、もともと、観劇は趣味のことですから、はい、勘弁していただいて。



 

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