子供のときに読みたかったと思うと同時に、今で良かったとも思う作品。
だいたいケストナーの作品は大きくなってからしか読んでいません。
読んだといっても、あとは『ふたりのロッテ』くらい。
『ほらふき男爵』はまだ読了していないので。
『ふたりのロッテ』は劇団四季のミュージカルを観て、ものすごい違和感を感じて、原作はどうなっているんだろうというのが読んだきっかけ。
舞台では、おとなしく成績も良くて、お母さんの手伝いもよくするロッテがとにかくいい子で、おてんばなルイーズは困った子として描かれている印象がとても強かったのです。
それって、どうなの?と結構むかむかしながら観ていたのです。
原作ではそんなことなかったのですが。
さて『飛ぶ教室』は、クリスマス近くの寄宿学校での出来事を描いている作品。
主人公格の5人の少年と、生徒たちを見守る大人たちが登場します。
親に捨てられた過去を持つ文才豊かなジョーニー。
腕っぷし自慢のマチアス。
リーダー格で、画も上手なマルチン。
弱虫といわれているウリー。
小難しい本を読んでいるゼバスチャン。
舎監のベク先生は「正義先生」と呼ばれているほど真っ直ぐな人。それでいて少年たちへの理解もあります。
学校の敷地の隣に住んでいる風変わりな大人「禁煙さん」も少年たちの良き理解者。
他の学校の生徒たちとの決闘や、弱虫ウリーの一大決心。
クリスマス休暇に帰ることができなくなったマルチンが「泣くこと厳禁。泣くこと厳禁。」と呪文のように唱えているところなどはこちらの息をつめて一緒に唱える気分です。
その理由は違っても、「泣くこと厳禁。泣くこと厳禁。」そんなふうに歯を食いしばることは、子供でも大人でも同じようにあるもの。
前書きでケストナーが書いているように、何を悲しむかではなく、どれほど深く悲しむか、です。
例えば、アイスクリームが食べる前に溶けてしまった悲しみも、世の無情と言えば無情。
大切なのは、不幸や世の中の厳しさに直面したときにもへこたれないこと。へこたれずに立ち向かうからこそ、勇気と賢さで切り抜けることができる。
そうでなければ、賢さを伴った勇気、勇気を伴った賢さをもつことはできないと、ケストナーはするりと言います。
これを子供のときに読んでいたら、どうだったろうと思います。
真っ直ぐにこれを受け止めていたら、人間が変わったかも。
でも、『飛ぶ少年』は読んでいませんでしたが、『クオレ』は読んでいましたからね~。どうかな…。
『クオレ』もやはり学校に通う少年たちの物語。
大掛かりな雪合戦があったり、いろいろな少年たちが登場していました。
担任の先生が渋くて…先生に怪我をさせてしまったりするところもあったと思います。
『飛ぶ教室』よりも、焦点があたる生徒が多かったような気がします。
少年の一人が書いているという設定だったからかも。
『母をたずねて三千里』ってこの中のお話でしたね。
ちょっと説教くさいところがありましたが、当時はそれなりに正義であるとか友情であるとか、愛情とかについて思った覚えがあります。
『飛ぶ教室』や『クオレ』は絵空事でしかないと思える現実があるのは、何とも寂しいことですが、それでも書かれるべきことであり、読まれるべきことだろうと思います。
飛ぶ教室
著者:エーリッヒ・ケストナー
発行:講談社
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子供のころ、真っ直ぐに受け止めていたような気がするのに、どうして、こんなふうに育ったのだろう・・・
・・・って、思うことあります。
どっかに欠片くらいは残っていると思いたいですけど。