ヘーゲル『哲学入門』第三章 宗教論 第七十九節[恵みと和解]
§79
Aber die Freiheit des einzelnen Wesens ist zugleich (※1)an sich (※2)eine Gleichheit des Wesens mit sich selbst, oder sie ist an sich göttlicher Natur. Diese Erkenntnis, dass die menschliche Natur der göttlichen Natur nicht wahrhaft ein Fremdes ist, vergewissert den Menschen der göttlichen Gnade (※3)und lässt ihn dieselbe ergreifen, wodurch die Versöhnung Gottes(※4) mit der Welt oder das Entschwinden ihrer Entfremdung von Gott zu Stande kommt.(※5)
第七十九節
しかし、同時に個人の存在の自由は、本来は自己自身と存在との同一性にあり、あるいは、個人の存在の自由は本来は神的な性質のものである。人間の本性と神の本性は本当は疎遠なものではないのだというこうした認識は、人間に神の 恵み を保証するものであり、そうして人間に恵みを捉えさせることによって、世界と神との和解 が実現し、あるいは、人間の神からの離反が解消するに至る。
※1
前節§78で人間が自己を普遍から分離させる自由をもつこと、神から離反する自由をもつ点において、人間の本来性が悪であることが説明されたが、本節の§79においては、同時に人間の個別が本来的に普遍と同質であることが説明される。「人間は神の子である」とも言われるのはこのことである。しかし悟性は、人間の個別と普遍を両立しえぬものとしてしか理解しない。
§ 280b[概念から存在への移行] - 夕暮れのフクロウ https://is.gd/j9SLmx
※2
an sich
潜在的に、本来的に、即自
※3
Gnade
慈悲、哀れみ、 慈心、 仁恵、恩寵、 恩恵、 祝福、 恵み、 至福、仕合わせ
※4
Versöhnung
和解、仲直り、和睦、宥和、償い、慰め
※5
恵みを確信させるのは人間性と神性が無縁なものではないという認識である。この神の恵みを捉えることにおいて、人間と神との和解、宥和を実現する。ここにキリスト教の核心が説明されている。ヘーゲル哲学は神学でもある。