夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

元号と政治家

2019年04月03日 | 国家論
 
 
元号と政治家

政治家たちは皇室に関連することについて、あまり口を挟まないほうがいい。皇室にかかわる問題、事柄は、いわゆる識者、学者、文化人といわれる人たちに任せておけばいい。与党であれ野党であれ、政治家がしゃしゃり出て、皇室について余計な口を挟むべきではない。

とはいえ「天皇ロボット」論などを唱えておられる憲法学の泰斗である樋口陽一氏などは、今回の政治家、安倍晋三首相の元号の制定の過程における政治利用に反対できないはずだ。なぜなら、樋口陽一氏にとっては、恐れ多くも天皇陛下は、国民主権のもと選挙で選ばれた政治家、内閣総理大臣、安倍晋三氏のロボットと等しき存在でなければならないそうだから。憲法学の大先生、樋口陽一氏には立憲君主国家の意義が理解できない。

新しい元号の解釈などは、学者先生たちに、歴史家、文学者、古典研究者たちに任せておけばいいことであって、何も素人の政治家である内閣総理大臣の安倍晋三氏が、出しゃばって新元号の講釈などを垂れなくてもいい。

いうまでもなく、元号は皇室のものであり、国民主権の「国民」といった正体の定かでもない、またその実体もよくわからない雲をつかむような得体も知れない存在が決めるものでもない。

元号をお決めになるのは、あくまでも天皇陛下であって、内閣総理大臣の安倍晋三氏でもなければ、ましてや官房長官の菅義偉氏でもない。もし現行の日本国憲法が、日本の古来からの確立した慣習法から逸脱しているのなら、改正されなければならない。

内閣総理大臣はただその職責において「有識者」を組織して、元号について候補となる諸案を研究させる。その過程の中から内閣は閣議などを経て、いくつかの諸案を絞り込んでゆき、それらを新しき天皇陛下に奏上して、その諸案の中から最終的にご決定いただくべきものである。

たとい内閣総理大臣であっても、政治家である安倍晋三氏やまして官房長官である菅義偉氏などには「元号」についての最終決定権はない。このたびの「平成」後の新しい元号の制定過程を見ていて、あたかも現在の政権与党を担っている自民党政府の内閣に元号制定権があるかのように振舞っていた。

安倍晋三氏などは、あたかも自分が音頭をとって新元号を制定したかのように、高潮した浮かれた趣で、新元号である「令和」の意義の講釈を行なっているように見えた。そこには、元号はあくまでも皇室のものであって、内閣などの政治家たちによって政治的に決められるものではないという、元号制定についての政治家としての自己相対化の自覚と謙虚さがないように思えた。皇室のものである元号を取り扱っているという畏れや謙遜も見えなかったように思う。(思い違いなら幸いである)

立憲君主国家についての深い哲学的な洞察もない、国家社会主義の系譜を引く、「保守」を自称する政治家としての安倍晋三氏の振る舞いだけがそこに見られた。
 
(※20190403追記)
 

「天皇ロボット論」者である憲法学者、樋口陽一氏らには、なぜ内閣総理大臣である安倍晋三氏の「元号の政治利用」について批判する資格がないのか、上記での論考だけでは分かりにくいかもしれません。下記の論考なども参考に。

『天皇機関説』と『象徴天皇ロボット論』https://is.gd/54Lvs0
 
(追記201904010)
 
 
 
 
 
 
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