島のまにまに~インドネシアの小径~

海洋国インドネシアのあちこちでで出会う、美しい村、美しいもの。自然とつながる暮らし。

バティック

2012-07-20 | 

バティックはジャワの芸術。
日本では昔からジャワ更紗の名で知られていた。

観光客はバリでバティックに出会うことが多いと思うけれど、
バリでバティックって作っているのだろうか?
バリはむしろバティックよりもイカットのほうが特産品である(と思う)。
   *最近のバティックの生産については→この人のブログに

日本の着物の感覚として言えば、バティックは「染め(の着物)」、イカットは「織り(の着物)」。
もう少し丁寧に言うと、バティックは織り上がった布に模様を描くもの、
イカットは糸を計画的に染めて、それを織ることで模様を出すもの。
(*そういう意味にこだわれば「後染め」と「先染め」と言い分けたほうがいいのだろうが)

かつ、バティックは、ろうけつ染め(ろうを使って模様を描く)。

バティックではないがバティック的な染めも、イカットも、日本の伝統的染織にあるものだ。
染めは、日本ではろうの代わりに糊を使ったものが多用されている。友禅に代表される。
イカットは久留米絣を筆頭に枚挙に暇がない。というか、どこの国にもある程度あるものだろう。
けれど、大部分の日本人女性は、インドネシアの布に「わぁ~」と目を輝かすけれど
足元にある日本の染織のことはほぼ全く知らない。
私も以前はそうだった。

と、こんなことを書きたいわけではない……。
大きく脱線。
一番書きたかったのは「芸術」だということ。


ジャワのバティックは本当に見事だ。
ろうで精細な模様を描き、それを何度も違う色の染液に浸すことで、美しい布が出来上がる。それは、もともと、各家庭で妻が夫のために作っていたものだという。
日ごろ身にまとうための布に、このように手間隙をかけられることの豊かさを思う。
妻が夫のために家庭で作るという伝統は、50、60年前から廃れてきているという。

模様は、蝋を1滴ずつ滴らせることのできる銅製の道具(チャンチン)を使って
細かい点々や線を描き出す。
無数に「点点点点点……」と付けて模様を作る発想とテクニックは、
ジャワの影絵芝居(ワヤン)で使う皮製の人形の模様にも現れていて面白い。
ちなみにジャワ人は、「点点点点点……」のことを「チックチックチックチックチック……」というのが、何か日本語に似ているし、雰囲気が出ていてクスッと笑える。


バティックについてほとんど何も知らずにジャワに行ったのだが
(私は自然染料に興味があったのだけど)
行ってアンティークバティックを訪ねたりして話を聞いてみると、奥が深くて面白い。
鳥や虫や花のモチーフにもいろいろな意味があったり、
地域性があったり。
ティガヌクリ(3つの地のミックス)、パギソレ(昼夜で違う模様を見せる)、などなど。

布のことを書き出すと大仕事になってくるので
手をつけないでいたけれど、今日ついに書き始めてしまった……

というのも、今日NHKの「ベニシアさん」(猫のしっぽカエルの手)で、
京都のろうけつ染め作家が、自分の考え出したろうけつ染めを描く道具、というのを紹介していて、それがジャワのバティックを描くチャンチンとよく似ていたからだ。

その人は自分で工夫して考えたと言っていた。
京都の友禅染めは筆で描く。
目的が同じだと自然に同じ道具にたどりつくのだというわけで面白かった。


ジャワにあるこの芸術を、鑑賞すべき作品だとか、伝統文化の保存だとか、
生活と離れたところにあるものとしてでなく、ましてや観光客向けのモノとか金儲けのネタとかではなく、
ジャワの人々が身近に接していたものとして、誇りを持って使い続けてほしいということである。こんなことはヨソモノの勝手なタワゴトなのであるし、余計なお世話であることは承知なのだけど、
正確には、バティックを生み出し使ってきたような美的感覚を持った「人」たちであることを、もっと誇りにして自慢してほしいと思う。私はインドネシアの人たちの潜在的美的感覚はすごい(というか日本人と違うものがある)と思っているし、どこまですごいのか知りたい。
おそらくインドネシアに限らず、近代化される前のプリミティブな人の暮らしの中には本物の美がたくさんあって、それは現代のわれわれを驚かすものであると私は思っている。
ジャワ人を見ていると、もっとジャワのいいところを強調してほしいと思わずにいられない。
このことはわが身を初めとした日本人にもいえる。


ひとまず、ここまで。



バティック(ジョグジャカルタ・2008年)



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