1年以上前に、フローレス島で炒ってないコーヒーの豆を買ってきた。
コーヒー好きの知人が、自分で豆を炒っていることがあるので、おみやげに、と思ったのだ。
ところが私がインドネシアから帰ってきたとき、その人は胃がんで入院中で、何も食べられない、飲めない状態。
豆を渡せないまま、その人は亡くなってしまった。
今思えば、飲めなくたって、豆を眺めてもらうだけでもよかったのかもしれない。
で、これまでコーヒー豆など炒ったことはないのだけど、
手元に残ってしまった豆を、フライパンで炒ってみた。白い豆が次第に茶色くなってコーヒーらしくなって、もうこれでよかろうと適当な勘でひきあげて、手回しの豆挽き機で挽いて飲んでみたら、香りがよくてとてもおいしい。
時間はかかるけど意外と簡単だった。
豆のままなら結構保存できるものだと思った。
種子なんだから当然といえば当然だ。
さて。
フローレス島やスラウェシ島の山岳地帯ではコーヒーを盛んに栽培している。
現金収入源としてとてもいいという。コーヒー園を持っていることは「ちょっとうれしいこと」だ。たいていは各家庭で零細にジャングルの一角や庭先で栽培している。
その豆を庭で干す。そういえば黒い豆を干しているけど、なぜ黒いんだろう? 炒ってから干している? そんなばかな。考えたこともなかった。
とにかく、そんなところを歩いていると、インドネシア人が「日本ではコーヒー採れるか?」と聞く。決まって、みんな聞くのだ。
「採れません」と真面目に答えつつ、内心では「知らないの?」なんて思っていたりする。しかし。
途中で気付いたのだけど。
恐らく彼らは、分かっていて聞いているのだ。
つまり、「俺らの土地はコーヒー採れるんだぞ、いーだろー。お前の国は採れないだろう、かわいそうに、はっはっは」てな具合。
そうでなければあんなにみんながみんな、嬉しそうに聞いてくるわけない。
どうせ採れませんよーだ。
さてさて。
スラウェシ島タナ・トラジャ地方の山中の道を歩いていると、どこかから、ポン、ポン、ポン、とリズミカルな音が聞こえてくる。石臼でコーヒー豆を搗く音である。
その音はやわらかくて、眠けを誘うようでもあり、何だか平和で天国に行けそうな感じに聞こえる。
音にひかれていくと、庭先で主婦たちがコーヒーを挽き、子どもたちがその周りで飛び回っていた。
挽いた豆はふるいにかけて、細かくなるまでまた挽くのだ。
トラジャの人達は大量にコーヒーを飲む。ポットにいっぱいいれて、お茶の時間には
耐熱ガラスの中ジョッキに入れて、砂糖を大量に入れて飲んでいる。
彼らはコーヒーとタバコを片時も手放さない割には、結構歯が白い。不思議だ。
何か別の食べ物で白くしているのだろうか?
あるいは伝統の秘密の歯磨き粉があるのだろうか?
写真/スラウェシ島タナ・トラジャで(2008年)
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