日本相撲協会は２９日、両国国技館で大相撲名古屋場所（７月７日初日・愛知県体育館）の番付編成会議を行い、アフリカ大陸初の力士でエジプト出身の大砂嵐（２１）＝大嶽＝ら４人の新十両昇進を決めた。大砂嵐は初土俵から所要８場所で外国出身では元大関・小錦、関脇・把瑠都に並んで最速の新十両となった。春場所に幕下１０枚目格付け出しでデビューした昨年のアマ横綱の遠藤（２２）＝追手風＝は最速タイの所要２場所での昇進。再十両は芳東（３６）＝玉ノ井＝のみだった。
笑顔満開だった。大砂嵐は東京・江東区の大嶽部屋で会見し「アフリカ大陸の関取は１人というのは、うれしい」とたどたどしい日本語で喜びを語った。所要８場所での新十両は、外国出身としては元大関・小錦、把瑠都に並び最速の昇進だ。
５月２９日は特別な日だ。所属する大嶽部屋は０４年１月１日に大鵬部屋から名称を変更した後継部屋。今年１月に亡くなった元横綱・大鵬の納谷幸喜さん（享年７２歳）の誕生日だった。夏場所千秋楽には仏前に幕下全勝Ｖを報告。その際に大鵬さんの芳子夫人（６５）から、生前に使っていたティーカップを譲り受けたという。大嶽部屋となってから初の関取となった大砂嵐は「大鵬親方は毎日、四股を５００回、てっぽうを１０００回やったけど、私はまだできない。頑張りたい」と誓った。
ただ新十両場所の名古屋は大きな試練が待つ。イスラム教徒の大砂嵐は、３日目の７月９日を目安に、日の出から日没まで絶食せねばならないラマダン（断食月）に突入する。昨年も同場所でラマダンがあったが、突入の目安は１３日目で、当時は序二段のため相撲は７番しかなかった。だが、今年は断食が序盤からの上に、１５日間相撲を取らなければならない。夜中に起きて食事するなど昨年と同じ対策を取るが、ラマダンは場所後にずらして実施もできる。しかし大砂嵐は「できるだけずらさない。十両は力水もあるけど、飲まなければ問題ない」と不安を一蹴した。
化粧まわしは、スポーツ報知の相撲漫画でおなじみの漫画家、琴剣淳弥さんがデザインを担当する。エジプトらしく青空の下に３つのピラミッド。その前に大砂嵐が仕切っている絵が描かれる。同国と日本の国旗も入る。締め込みは黒になる予定だ。周囲の期待に大砂嵐は「横綱を目指して、もっと稽古を頑張る」と力を込めた。
◆大砂嵐 金太郎（おおすなあらし・きんたろう）本名・アブデルラフマン・シャーラン。１９９２年２月１０日、エジプト・ダカハレヤ生まれ。２１歳。０８年世界ジュニア選手権個人無差別級３位、団体２位。１０年同大会は個人重量級３位。昨年春に初土俵。昨年夏、序ノ口優勝。今年夏、幕下優勝。１８９センチ、１４３キロ。得意は突き、押し。通算戦績は４２勝６敗１休。