[サンフランシスコ 15日 ロイター] インターネット検索大手の米グーグル<GOOG.O>は15日、定額制の音楽ストリーミング配信サービス「オールアクセス」を開始すると発表した。利用者は月額9.99ドルを払えば、無制限で音楽を楽しむことが可能となる。
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サンフランシスコで15日始まった年次開発者会議「グーグルI/O」で発表した。グーグルは競合の米アップル<AAPL.O>に先駆け、音楽ストリーミング市場に乗り出し、同サービスで優位にある米パンドラ<P.N>やスウェーデンのスポティファイに攻勢をかける。
グーグルが打ち出す新サービスは、利用者が楽曲の選択をカスタマイズできるほか、個別の曲目リストを作成して再生したり、ストリーミングラジオのように音楽を聞いたりすることが可能となる。
まずは米国でサービスを開始し、その後、他の国に拡大していく計画。
開発者会議ではまた、新たな地図や音声検索といったその他のサービスの改善点についても明らかにされた。強調されたのは、グーグルのモバイル基本ソフト(OS)アンドロイドを搭載したモバイル機器ユーザー向けのオプションが拡大したことだ。
地図機能では、昨年買収した飲食店情報ブランド「ザガット」との統合を進めたほか、ラリー・ペイジ最高経営責任者(CEO)が個人的に求めたように、宇宙から見たような表示が可能になった。音声検索ではユーザーのセンテンスを理解し、その人が何を求めているのかを判断するという。
急成長するモバイル分野でプレゼンスを高める上で、音楽ストリーミングサービスや定額制サービスが不可欠として、グーグルやアップル、アマゾン・ドット・コム<AMZN.O>などでは、レコード業界の幹部を引き抜こうとする動きが出ていると関係筋は指摘する。
とりわけグーグルとアップルにとっては、自社のモバイル製品にユーザーをつなぎとめるために不可欠な戦略となってくる。
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のフェイスブック<FB.O>やツイッターもこの流れに乗っている。
グーグルの月額9.99ドルの利用料は、パンドラの3.99ドルよりも高価だが、スポティファイと同程度だ。
ストリーミング用のライブラリーがどの程度の規模になるかは不明だが、ハイテク関連ブログのTheVergeは14日、グーグルがユニバーサルミュージックやソニー・ミュージックエンタテインメントと契約を結んだと伝えた。
AlbertFried&Co.のアナリスト、リッチ・トゥロ氏は「パンドラはこの分野の市場シェアトップであり、膨大な基盤を築いている。対抗するのは非常に大変だ」と述べた。
ペイジCEOは「おそらくパーソナル・コンピューティングの誕生以来、コンピューティングの分野でこれほどの変化が起きたのを長い間見たことがない」と指摘。「われわれはまだ、可能なことの1%にしか達していない」と述べた。
ペイジCEOは前日に自身が抱えている、声帯まひで声が出なくなるという問題について初めて公の場で説明。CEOはこの問題で昨夏ごろから公の場で講演を控えていたものの、15日は壇上で45分にわたって話した。
ハイテク業界の進化を阻害する「消極性」を非難しながら、ペイジCEOはマイクロソフトやオラクルといった競合を名指しし、グーグルや他社と十分に協力していないと批判した。
また、グーグル幹部はこの日の年次会議で、同社のモバイル基本ソフト(OS)アンドロイドを搭載したスマートフォン(多機能携帯電話)とタブレット端末のアクティベーション(稼動)数が2010年以降、約9億件に達したことを明らかにした。
*内容を追加して再送します。