■ビラノバのままでいいのか
5月1日、カンプ・ノウでプレーしていたのは“バルセロナ”ではなかった。この試合のバルセロナのボールポゼッション率は58%。通常、70%近くを記録するバルセロナにとってはかなり低い数字だ。数字以上にサッカーの内容は良くなかった。
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ボールホルダーに対するサポートの動きは皆無で、苦し紛れにサイドに逃げては雑なクロスを放り込む。攻守の切り替えは遅く、バイエルン相手にカウンターを簡単に許してしまう。バルセロナの奇跡を期待した人たちは失望感だけを味わっただろう。
グアルディオラ監督の就任以来、圧倒的なボール保持率をベースにしたポゼッションサッカーで頂点を保ってきたチームに変革のときが訪れている。来シーズン、バルセロナが這い上がるためには何が必要なのだろうか――。
まず考えるべきは「ビラノバのままでいいのか?」だ。
ビラノバはグアルディオラのチームを引き継ぎ、スタメンを固定して戦った。その結果、チームというよりも個の力に依存する傾向が強まり、特定の選手がいなくなったときにサッカーの質が変わる要因となった。
采配面でもグアルディオラは3バックを試したり、ポジションを入れ替えたりして刺激を与えてきたが、ビラノバは基本的に同じシステムで戦うため、マンネリ化を招き、対戦相手に対策されやすくなった。
■責任はあるが現実的ではない監督交代
また、シャビの後継者といわれるチアゴ・アルカンタラがブレイクしきれなかったのは、本人の実力や怪我もあるとはいえ出場機会が限定的だったことも大きい。バイエルン戦に出場したセンターバックのバルトラはリーグ戦、CLを合わせても3試合しか先発出場していない。ビッグマッチのピッチに立つにはあまりにも経験不足だった。
あらゆる角度からビラノバの監督としての力量には疑問符がつく。とはいえ、カリスマ監督の後を継ぐのは、どんな名将であっても難しいもの。ましてやビラノバの場合は病気治療のためチームを離れていたという特殊な事情もある。
さらに、バルセロナの場合、サッカーのスタイルが確立されているため、他のチームのように外から監督を連れてきてもフィットするのは簡単ではない。よって、監督交代をすることは現実的ではない。
バルセロナが復活するには、ビラノバがチームに刺激を与えつつ、若手を積極的に登用し、新陳代謝を図っていくことが条件となる。バルセロナのスタイルを貫きながら、新たな黄金時代を目指すには、それが最善の方法といえる。
■センターバックに誰を加えるべきか
補強面でも同様のことが言える。これがレアル・マドリー、マンチェスター・シティ、パリ・サンジェルマンであればスター選手の名前を挙げていけばいいが、バルセロナはそうはいかない。
必然的に補強ポイントは絞られる。具体的にはバルデスが退団を示唆しているGKのポジションと、バックアッパー不足のセンターバックとピボーテ(守備的MF)だろう。
GKはシュートストップの能力はもちろん、バックパスを多用するチームのスタイルに適応するためにパスをつなげる技術が必要とされる。年齢的にも、スペイン人選手という点でも理想的なのはマンチェスター・ユナイテッドのデ・ヘアだが……。
センターバックにはバルセロナのウィークポイントでもある高さを補いつつ、パス回しをこなせるタイプの選手がほしいところ。空中戦の強さがあって、パス回しの起点となれて、最終ラインからドリブルで運んでいける選手といえば、ドルトムントのフンメルスがすぐに思い浮かぶ。
もう一人が、アーセナルのヴェルマーレン。フィジカルコンタクトも強く、高さもある。何よりも魅力的なのが左足のフィード能力。最終ラインからピケとヴェルマーレンがロングパスを狙っていけるようになれば、バイエルンのようにハイプレッシャーをかけてくるチームの裏を突くことが可能になる。
■ネイマール加入がもたらすもの
ピボーテは最も難しい。パス回しの起点となるポジションであり、バルセロナのサッカーを熟知していなければならない。ブスケツのような選手がいないのであれば、2列目でプレーするセスクをコンバートするのも一つの手かもしれない。
そして、すでに契約を結んだと報じられているネイマールに関しては、チームに加わればプラスになる可能性が高い。多彩なフェイントと爆発的なスピードで仕掛けていけるネイマールは、守備ブロックを固められた相手をこじ開けるためのピースとして申し分ない。
ネイマールがバルセロナのパス回しに加わるのか? と疑問視する声もあるが、バルセロナではウィングは高い位置をとって攻撃の深さを作ることが約束事になっており、中盤の選手のように連動性を求められる場面はそれほど多くない。
懸念材料はメッシとの共存か。今のバルセロナはメッシのタイミングに合わせて周りが動くことが暗黙の了解となっており、ネイマールが埋もれてしまう可能性はある。メッシとネイマールがお互いを活かし合う関係になれば、バルセロナの“メッシ依存症”が解決される可能性は高い。