風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の九 

2010-02-26 17:00:45 | 大人の童話

六小が開校してもうすぐ一年になろうというある日、開校記念に、全校で校庭に

人文字を描き、それを空から撮影するということになりました。子どもたちはみんな、

もう大はしゃぎです。夢も、これからどんなことが起こるのかとわくわくしていました。

先生たちが、「はい、あなたたちはこっちに並んで、君たちはあっちに行って。」などと

言いながら、子どもたちを学年ごとに誘導して並べていきます。やがて、何とか

文字ができあがりました。みんな、にこにこしながら空を見上げています。飛行機が

飛んでくるのを待っているのです。

「夢ちゃん、夢ちゃん。」

呼びかける声に夢が振り向くと、そこにはチカッチカッと小さく光りながら、

いたずらっぽく笑っている六小がいました。

「うまく描いたわね。へたくそだったら、みんなを飛ばしちゃおうと思っていたのに。」

「また、六小さんは!みんな、上手に描いたでしょ。そんなことばかり言ってると

みんなにきらわれちゃうよ。」

「いいわよ。どうせ、みんなはわたしのことなんてわからないんだから。」

「もう!そんなこと言って。」

「だって、ほんとのことじゃない。」

「そりゃ、まあ、そうだけど。」

「でしょ?」

 そんなことをいっているうちに飛行機が飛んできました。子どもたちから、

「ワーッ。」という歓声があがります。

”あそこからどうやって写真撮るんだろう。わたしたちは、ちゃんと撮れているかな。

写真できたら見てみたいな。”

雲一つない青い空、校庭の上を高く低く、何回も回りながら飛んでいる飛行機を

眺めながら、夢はそんなことを考えていました。

 



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