風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第三部)六小編 其の弐拾八

2010-05-14 02:48:45 | 大人の童話

体育館を出ると、夢は隣りにあるプールの脇に立ちました。此処で、午後の部を

見るつもりなのです。夢の在学中、此処にはブランコと砂場がありました。夢は、

あまりブランコでは遊びませんでしたが、ブランコは当時、子どもたちに人気が

あった遊具の一つでした。此処からは、校舎を真正面に見ることができます。夢は、

じっと六小を見つめていました。すると、あまりじっと見つめられて気になったのか、

六小が声をかけてきました。

「夢ちゃん、なに、わたしのことじっと見てるのよ。はずかしいじゃない。わたしより

子どもたちを見てよ。運動会を見に来てくれたんでしょ。」

「え、ああ、うん、ごめん。」

夢は、いろいろ見ているうちに、昔のことを思い出していつのまにか、六小をじっと

見てしまったことを話しました。それを聞いた六小は、

「フフッ、夢ちゃんたら昔から変わらないね。何かを、じぃーっと長い時間見つめる

のは。わたしを見つめてくれるのはうれしいけど、子どもたちのことも、ちゃんと見て

あげてね。みんな、一所懸命やってるから。昔、夢ちゃんたちが一所懸命やってた

ように。」

と、見つめられるのははずかしいと、少し照れながら言いました。

「うん、もちろん。みんな、一所懸命だね。フフッ、かわいい~。」

「そうでしょ。」

夢は、自分が小学生の時、運動会が楽しくてしかたなかったことを思い出し、

遠い日を見るように懐かしそうに子どもたちを見ていました。

 



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