風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の八  

2010-02-24 21:16:26 | 大人の童話

春になり、新しい学年が始まりました。三年生になった夢は、毎日元気いっぱいに

学校生活をおくっていました。特に休み時間は、皆ワーッと校庭に出ていくので、

夢も遅れまいと、急いで教室を飛び出していきました。この頃には遊具も増えて、

子どもたちも、前よりずっと楽しく遊べるようになっていました。小学校定番の鉄棒・

はんとう棒・うんていの他、跳び箱のようにして遊ぶ土に半分埋まった古タイヤ・色を

塗った丸太を利用して作った平均台・土を盛って作った小山などです。小山には

芝生が植わっていました。夢は、そのときどきによって遊具を変えて遊んで

いました。今日は、はんとう棒です。でも、なかなかうまく上れません。皆は、

お猿さんのように上手にスルスルと、てっぺんまで上っていくのに、夢は、みんなと

同じようにやっても上っていきません。それでも、一所懸命上ろうとしていました。

が、やがて、あきらめて降りてしまいました。すると、校庭の向こうに見える校舎が

光りだし、まもなく六小のクスクス笑う声が聞こえてきました。そして、

「何、夢ちゃん、はんとう棒上れないの?みんなスイスイ上っているのに。

へたくそ!」

と、おもしろそうに夢をからかいました。

「何よ、別にはんとう棒なんて、上れなくてもいいもん。」

「へー、そうかな。この間、体育の授業でやってなかったっけ。上れないの、

夢ちゃんだけだったよね。本当に上れなくてもいいのかなあ。」

「もー、いいったらいいの。うるさいなあ。あっち行ってよ。」

夢は、そう言いながら、得意なうんていの方に歩いて行きました。

「これなら、六小さんに何も言わせないもんね。」

「あー、夢ちゃんったら、わたしに言われたからって得意なうんていに行ったあ。

ずるーい。だめじゃない、もっと、はんとう棒練習しなきゃ。」

「いいんだったら。黙って見ててよ。」

夢と六小の心の会話は、これからこんな調子で続くのでしょうか。夢は思いました。

 ”あーあ、四小さんだったら静かに見守っていてくれるのになあ。できない時は、

やさしく励ましてくれるのに。もう、六小さんたら騒々しいだけなんだもん。四小さんに

会いたいなあ。”

そんな夢の思いを察知したのか、また六小が話しかけてきました。

「夢ちゃん、今、四小さんのこと思ったでしょ。」

「うん。だって、六小さんうるさいんだもん。」

「だったら、四小さんのとこに行けばぁー。」

「行けるわけないじゃない。わかってるくせに。」

「ウフッ、だったらさっさとあきらめて、わたしとつきあうのになれるのね。わたしが

四小さんのかわりに、夢ちゃんとつきあってあげるから。」

「六小さんたら、そういうことじゃないでしょ。」

「ウフフフ、夢ちゃんておもしろいと思っていたけど、やっぱりおもしろいわ、ウフフ。」

六小はそう言うと、大きく光を放ち、笑いながら消えていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。